携帯電話事業の巨額赤字で財務が悪化した楽天グループが頼ったのは、日本政府が過半数の株式を握る日本郵政だった。官製救済シナリオに死角はないのか。特集『楽天 底なしの赤字』(全7回)の#3では、三木谷浩史会長兼社長ら創業家に次ぐ楽天の第2位株主になった日本郵政との提携の内幕を探った。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
楽天から要請を受けた日本郵政
携帯電話の知見ないまま決めた出資
「楽天の携帯電話事業をどう見ているか」――。
今年1月、通信業界を担当するアナリストが、日本郵政の企画担当者から突如として意見を求められた。
日本郵政からの質問は初歩的なものだったが、このアナリストは「料金競争が激化しており、楽天が携帯キャリア事業を続けるには資金が必要です。今年の早い段階でスポンサーを見つける必要が出てくるでしょう」と率直に答えたことを記憶している。
なぜ日本郵政が門外漢の携帯業界に関心を持っているのか――。当時はその真意を測りかねたが、それから2カ月後に日本郵政側の狙いが明白になる。
3月12日、日本郵政が楽天グループに1500億円を出資すると発表された。くだんの日本郵政の企画担当者は、出資を検討していた楽天の調査に追われていたのだ。楽天と日本郵政は2020年12月に物流分野で業務提携していたが、同日の記者会見で増田寛也社長が資本提携に至った経緯について話している。
「1月に入って資本提携にした方がいいと楽天から申し出があったが、われわれも、その方が提携の実が上がると判断した」
日本郵政の携帯業界への知見は明らかに乏しい。それでも、楽天への出資は1~2カ月という短期間で決められたのが実態なのである。
慌ただしく決まった救済出資の裏側には何があったのか。