ゆうちょ銀行元幹部が提言、「かんぽスキーム」で郵政出資を50%以下に下げよPhoto by Takahisa Suzuki

ゆうちょ銀行の常務執行役をかつて務めた筆者は、遅々として進まない「ゆうちょ銀行の民営化」に危機感を募らせている。そして本稿では、日本郵政が持つゆうちょ銀行株の売却に向けて、5月にかんぽ生命保険が実施した自社株買いのスキームを使うことを提言する。(京都大学経済学部特任教授、経済学博士 宇野 輝)

東証の市場区分見直しが問題提起
郵政民営化プロセスへの疑義

 郵政民営化のプロセスに対して、東京証券取引所による市場区分の見直しが問題を投げかけている。ゆうちょ銀行が見直し後の最上位市場「プライム市場」に残留するためには、「流通株式比率35%以上」という基準をクリアしなければならないからである。

 ゆうちょ銀行は次善の策として、「上場維持基準適合に向けた計画書を提出し、その進捗状況を開示することで経過措置の適用を受ける」と述べているが、株式処分のロードマップがないままとなっている。

 そもそも郵政民営化法では、日本郵政が傘下の金融子会社2社であるゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の全株式を売却することになっている。それに向けて日本郵政は、両社の経営状況とユニバーサルサービス確保の責務への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に全株式を処分しなくてはならない。

 日本郵政とゆうちょ銀行は、株式処分についてはできるだけ早期に日本郵政によるゆうちょ銀行の議決権保有率を50%以下にするとし、当該方針に沿って民営化プロセスを着実に推進すると述べている。

 しかし、ゆうちょ銀行は特例に基づいて、東証1部の上場審査基準である「株式の流通比率(上場時見込み)35%以上」を適用されずに上場したが、15年の上場から丸5年以上たってもその基準に達していない。まして、日本郵政による議決権保有比率50%以下を達成できる状況には程遠い。

 日本郵政によるゆうちょ銀行の株式処分の課題については、議決権の89%を保有する日本郵政に対して、11%の少数株主の権利は、上場時の特例によって疎外されてきたといってもよい。