EV化で見え始めた欧米の異なる思惑Photo:123RF

EUと米国で自動車電動化政策に「ある違い」が出た。EUではガソリン車に加えてハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)とも禁止。一方、米国はPHVと燃料電池車(FCV)も許した「良いとこ取り」な方針だ。他方、工業製品評価に「ライフサイクルアセスメント」(LCA)が強化されると、火力発電中心の日本経済にとって大きな打撃である。メード・イン・ジャパン製品の競争力は失われるかもしれない。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)

EUに続き米国でも
自動車電動化の規制表明

 世界的な脱炭素の流れが、自動車産業を取り巻く環境を大きく変化させている。7月、欧州委員会は2035年にEU圏内でのガソリン車の販売を事実上禁止し、電気自動車(EV)などへの移行を目指す方針を示した。欧州委員会は、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)とも禁止する見込みだ。

 一方、米国のバイデン大統領は大統領令に署名し、30年の新車販売に占めるEV、PHVと燃料電池車(FCV)の割合を50%に引き上げると表明した。世界最大の自動車市場である中国も、新車販売に思い切った規制をかけることを鮮明にしている。

 こうした脱炭素の背景には、専門家の想定を上回る地球の気温上昇がある。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、21年~40年に産業革命前と比較した気温上昇幅が1.5度に達するとの予測を公表した。地球物理学の専門家に聞くと、現在の地球環境は相当厳しく、緊急事態だ。

 今後、世界全体で自動車などの原材料の生産、利用、廃棄の際に排出される二酸化炭素量を評価する「ライフサイクルアセスメント」(LCA)が強化され、再生可能エネルギーを用いて生産された素材、部材、完成品を求める企業や消費者が増えるだろう。わが国経済は官民総力を挙げて、経済活動の根幹であるエネルギー政策から対策を進めなければならない。