22卒(2022年3月卒)の大学院生・大学生の採用活動が9月以降も続いている。すでに学生への内定を出し終え、10月1日の「内定式」を迎える企業も多いが、「秋採用*1 」はこれからが本番だ。特に、知名度の低い中小企業は、採用面接の方法やその後の「内定者フォロー」が、人材獲得の生命線になる。先月配信記事の『さまざまな「内定者フォロー」で、企業の採用担当者が必ず心がけたいこと』に続き、採用コンサルタント/採用アナリストの谷出正直氏に、中小企業が良い人材を獲得するための方法を聞いた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)
*1 「秋採用」に明確な定義はないが、一般的には8~11月末までの学生の就職活動に沿った企業側の採用活動をいう。
採用担当者は常に優秀な社員でなければならない
企業からの内定を承諾した学生が、来春(2022年・春)の入社後に「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないため、経営者や人事部の採用担当者が強く心がけることを何だろうか? 採用活動の過程において、谷出さんはこうアドバイスする。
谷出 企業は、自社の良いところに加え、学生(以下、「就活生」と同意)がネガティブにとらえるかもしれない“リアルなこと”もしっかり伝えることが肝心です。説明会をはじめとした採用活動では自社の良いことばかりを強調しがちですが、イメージとしては、8割はポジティブなことを、残りの2割は「我が社にはこうした側面もあって…」と、実状を話すべきでしょう。たとえば、「プロジェクトの仕事が山場を迎えたときは、月に数日は終電ぎりぎりになることもある」といったふうに、長いタームでの残業時間の説明があって然るべきですが、それが十分でないため、「残業はほとんどないと聞いていたのに…」という不満を新卒社員が感じたりします。また、併せてその実状に対して、現在の社員は“どのようにとらえているのか? 理解しているのか?”を伝えると良いでしょう。「平均すると残業時間は月に○時間くらいになりますし、プロジェクトが終わると、翌日は定時で終了となるので、リフレッシュして次のプロジェクトに臨むことができます」といった説明が望まれますね。情報を正しく伝えたうえで、その学生が自社に合うか合わないかの見極めを行い、定着の見込みが薄そうな学生には無理に内定を出さないこと。「採用目標の○人を達成するため、最後のひとりだから内定を出してしまおう」――そんな姿勢は、企業にも学生にとっても意味がないですね。
言うまでもなく、採用活動で学生に向き合うのは、AI(人工知能)ではなく、感情のある生身の人間だ。企業を代表する採用担当者の力量が、「内定者フォロー」をはじめとした採用活動の成否に直結すると思われるが…。
谷出 採用担当者が優秀な社員であることがとても重要です。「人事(採用担当)は数字に直結しない間接部門だから…」と、採用担当の人選を軽視しがちな会社もありますが、誰から見ても、明らかに能力が劣っている人が採用担当だったらどうでしょう? 学生もそうした人とは一緒に働きたくないですよね。だから、採用担当者がイマイチな会社は、優秀な学生の採用が難しくなります。また、採用担当者が「自社の事業や商品・サービス、職業に自信を持っているかどうか」もポイントです。自分たちが提供している商品やサービスに確固たる自信があるか。また、たとえば、営業職を採用するなら、採用担当者に「営業という仕事はたいへんで貴重なもの」といった理解と共感があるかどうか。「営業仕事って、とりあえず、オンラインでうまく喋れればいいんでしょ」みたいな考えでいると、それが営業志望の学生におのずと伝わり、企業のマイナスイメージになります。
谷出正直 Masanao TANIDE
採用コンサルタント/採用アナリスト
奈良県出身。筑波大学大学院体育研究科を修了。新卒でエン・ジャパンに入社。新卒採用支援事業に約11年間携わり、独立。現在は、企業や大学、学生、採用支援会社、メディアなど新卒採用や就職活動に関わる一方、約2700名と活きたネットワークを構築。企業の採用支援、企業や大学、学生に向けた各種セミナーや講演、研修などを行う。NHK、日本経済新聞など各種メディアに年間120本以上のコメントやインタビューが掲載される。NHK「クローズアップ現代+」に出演。筑波大学同窓会「一般社団法人 茗渓会」理事。