過去5年間で日経平均株価が65%も上昇した一方で、18%も株価が下落した楽天グループ。前期はモバイル事業で2270億円の営業赤字に転落して、今期のモバイル事業の赤字幅はさらに拡大する見込みである。半面、国内2位のECは流通総額が増加、金融も日本トップクラスのフィンテック企業に成長して、「時価総額10兆円シナリオも条件によっては描ける」との声もある。特集『目指せGAFA! メガベンチャー番付』(全10回)の#6では「時価総額10兆円」のシナリオを分析した。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
日経平均が65%上昇する中で
楽天グループの株価は18%も下落
「海外事業からの撤退」「モバイル事業で巨額損失」――。
日本を代表するメガベンチャーでありながらも、毀誉褒貶が激しい企業が楽天グループだ。グループの総帥、三木谷浩史会長兼社長が2012年に社内公用語を英語にしたにもかかわらず、海外事業からの撤退が続いていることをやゆする声もある。
同社は楽天市場から事業をスタートしたが、そこで満足することなくトラベルや証券、カードなど事業を拡大。楽天トラベルは国内旅行については、旅行業者で取扱高がトップ級に成長。また楽天カードの取扱高は11兆円を超え業界首位、楽天証券の証券総合口座数も野村證券を抜き、SBI証券と首位を争う状況になるまで成長した。
ただし、前期はモバイル事業の営業赤字が2270億円まで拡大。今期は第2四半期の段階で営業赤字が1973億円まで膨らんでいる。16年初からの株価は、日経平株価均が65%上昇する絶好の相場環境にもかかわらず、18%も下落している。株式市場からの評価は芳しくない。
現在、1991年以降に設立した企業で時価総額5兆円を突破しているのは、エムスリーとZホールディングスの2社。以前は楽天グループが上位だったが、逆転されてからは差が開きつつある。市場から再評価されて、時価総額10兆円を目指すような展開を期待できるのだろうか。
「これほどベンチャー精神を忘れない会社は珍しい。常に何かにチャレンジしようというマインドは本当にすごいと思います。時価総額10兆円シナリオも、条件によっては描ける可能性はあると思います」(クレディ・スイス証券シニアアナリストの風早隆弘氏)
次ページではECと金融、モバイルなどセグメント別に細かく数字で分析。時価総額10兆円シナリオの条件についても検証する。