強い権限を持つ監事は
理事会から独立した存在

 次に、Bの「監事が臨時総会を招集する」場合だが、その前に「監事」という役職について説明しておきたい。

 管理組合の役員は「理事」と「監事」に大別される。理事は管理組合の業務を執行する役割を持ち、理事会は管理組合の業務執行機関として機能する。

 それに対し、監事は管理組合の業務の執行と財産のチェックを行う(業務監査と会計監査)。企業でいうところの監査役や公認会計士のような役割を持ち、通常総会では監査報告が義務付けられている。

 そうした性質を持つため、総会では理事が選ばれ、その後、理事による互選で理事長が選ばれるのに対して、監事は総会で選ばれる仕組みになっている。

 監事は管理組合の役員だが、実は理事会を構成する理事ではない。そのため、理事会への出席は可能でも出席の義務はなく、一方で理事会での議決権も持たない。

 この「理事会に出席する義務はない」という点ばかりがクローズアップされて、役員の中では楽な仕事と思われがちだが、本来は管理組合(理事会)の運営をチェックする重要な役割を持っているのだ。

 実際、管理組合における監事の役割は重要視されており、2016年3月に公表された現行のマンション標準管理規約でも、監事の権限が強化されている。少し長くなるが、改正後のマンション標準規約中、「監事」に関する規約を以下に引用する。

〈現行のマンション標準管理規約より〉
(監事)
第41条 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。
2 監事は、いつでも、理事及び第38条第1項第二号に規定する職員に対して業務の報告を求め、又は業務及び財産の状況の調査をすることができる。
3 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。
4 監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。
5 監事は、理事が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令、規約、使用細則等、総会の決議若しくは理事会の決議に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない。
6 監事は、前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、理事長に対し、理事会の招集を請求することができる。
7 前項の規定による請求があった日から5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合は、その請求をした監事は、理事会を招集することができる。

 改正によって、それまでの規定よりも強化された主な内容としては、2項の「管理組合の業務に対して報告請求権と調査権が認められるようになった」、4項の「理事会への出席と意見を述べることが義務化された」、6項の「理事長に対して理事会の招集を請求できる」、7項の「理事会の確実な開催を確保することができるようになった」という点が挙げられる。

 このように、監事は理事会に対して独立した機関であり、強い権限を持つ役職なのである。

 ところが、中・小規模のマンションでは、監事はほとんど理事の1人となっており、理事会でも議決権を与えられていて、監査業務よりは理事業務を中心に行っている、という管理組合が少なくない。

 本来は管理組合の会計監査と同時に事業監査も行わなければならず、第三者としてしっかりと管理すべき立場であり、理事の一員として働くべきではないのである。