先送りの金融所得課税強化
「分配重視」に避けて通れない課題
岸田文雄首相が「成長と分配の好循環」を掲げ昨年の自民党総裁選で打ち出した金融所得課税の見直しによる「1億円の壁」問題の解消は先送りされてしまった。
株式取引などの金融所得に対する分離課税は、所得が1億円を超えると、所得が増えるほど所得税負担が軽くなる逆進性を生み出す元凶とされてきた。
だが、市場関係者や経済団体から課税強化の経済への影響を警戒する声が一斉に上がり、実際に10月初めに株安になったこともあって一気にトーンダウンした。
昨年12月にまとめられた令和4年度(2022年度)与党税制改正大綱(以下「与党大綱」)では、「税負担の公平性を確保する観点から、金融所得に対する課税のあり方について検討する必要がある」と明記されたものの、具体的な動きはない。
だがこの問題は税の公平感確保や所得再分配機能の回復のためには看過できない。
分配重視の岸田政権にとっても避けて通れない課題だ。