コロナ禍の株式市場を盛り上げたSaaS関連企業だが、直近は株価が半値以下になった企業が目立つ。だが、いちよし経済研究所の伊藤研一アナリストは「業績は堅調な企業が大半」と指摘する。SaaS市場は急拡大中で、今後はM&A合戦も勃発する可能性が高いからだ。特集『今こそチャンス!日米テンバガー投資術』(全16回)の#3では、上場全28銘柄の最新序列を明らかにしつつ、注目企業の取り組みを分析した。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
バブル崩壊も売上高成長率は高水準
暴落時こそ10倍株候補生を探せ!
コロナ禍で脚光を浴びたSaaS(Software as a Service)関連企業の株価が急落している。
下図はSaaS上場企業28社から構成されるクラウドインデックス(One Capital Cloud Index)と日経平均株価などの比較チャートである。コロナ禍において、2018年比で4.5倍超に急騰したものの、直近は半値以下に下落している。
個別銘柄では、半値以下どころか、7割以上も下げたSaaS企業も多い。どうして売りたたかれているのだろうか。
「金利の上昇によるグロース株の調整に巻き込まれた、といえなくもないですが、そもそも株価が上昇し過ぎていました」(みずほ証券の佐藤耕喜シニアアナリスト)
とはいえ今回の急落で、極端な株価の割高感は解消しつつある。反転復活はあるのか。いちよし経済研究所の伊藤研一アナリストはこう分析する。
「業績は堅調に推移している企業が大半の印象です。また、株価が下落したことで、非上場企業も含めてバリュエーションが低下する可能性があり、これから2~3年のスパンで考えると、M&Aが加速するのではないかとみています」
中小企業の生産性改善は必須で、働き方改革も追い風になる。電子取引データの電子保存の義務化など、電子帳簿保存法の改正もスイッチングを促すきっかけになる。
伊藤氏はSaaS企業から10年以内に時価総額1兆円を超える企業が出てくると予想している。となれば、中長期では10倍株も夢ではないかもしれない。
「値動きは激しいですが、ストック収益中心で、解約率も低いことを踏まえれば、長期的な成長ポテンシャルは高いセクターだと思っています」(伊藤氏)
次ページではクラウド会計から名刺管理、人材マネジメントなど上場SaaS企業28社を一挙に公開(下表はサンプル)。
その序列を明らかにするとともに、中長期で高い成長が狙えるいわば10倍株候補生ともいえるような注目企業もピックアップ。どの数字に注目すればいいのかという、SaaS企業の分析手法と併せて解説していく。