日本企業も避けられない気候変動対応開示、TCFD義務化の英国に学ぶべき視点地球全体の気温上昇を2℃に抑えるために、温室効果ガスを現状レベルで排出し続けられるのは、残り31年だ
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残り時間は30年
英国ではTCFDを義務化

 2021年8月に公表された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)」によれば、地球全体の気温上昇を2℃に抑えるために、温室効果ガス(GHG)を現状レベルで排出し続けられるのは、残り31年と推定されている。

 社会の公器である上場企業は、残された30年にどのような貢献が可能かを考える必要がある。

 英国は、ブレグジット直前の2020年12月、プレミアム市場(今年4月4日に始まる東京証券取引所のプライム市場に相当)に上場する企業を対象に、気候関連財務情報開示タスクフォース(The Task Force on Climate-related Financial Disclosures:TCFD)提言に沿った開示を義務化した。

 TCFDとは、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)が2015年に設立した組織だ。TCFDは2017年6月に最終報告書を公表し、企業などに対し、気候変動関連リスク・機会に関する4つの項目(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)について開示することを提言している。

 英国でのTCFD提言に沿った第1回目の開示は、今年(2022年)に行われる。2023年までに英国に拠点を持つ非上場の大企業などにも開示対象が広がり、2025年までには完全義務化される方針だ。

 英国政府は、2019年公表のグリーンファイナンス戦略において、2022年までに全上場企業がTCFDに沿った開示をすることを推奨していた。ところが、2020年の金融行為監督機構(FCA)調査で、TCFDに沿った開示をするプレミアム市場上場企業は、3分の1に留まっていた。

 このまま企業の自主的な任意開示を求めていてもTCFDの採用が進まないと踏んだ英国政府は、「コンプライ・オア・エクスプレイン(Comply or Explain)」(遵守せよ、さもなくば、説明せよ)の姿勢で、TCFD開示の義務化に踏み切った。