昨年8月、関西の中学受験関係者に激震が走った。難関校の合格実績で他の塾をごぼう抜きし、王者、浜学園に肉薄するまで急成長した馬渕教室。その中学受験部門トップでテレビにも出演する、馬渕快進撃の立役者、吉田努氏がライバル塾に電撃移籍したのだ。特集『わが子に最強の中高一貫校&小学校&塾』(全26回)の#8では、吉田氏本人が登場。戦いの場を「東京」に移して5月に始動させるという新たなミッションと野望を激白する。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
灘中合格者を短期間で激増させた
馬渕の中学受験部門トップが独白
一昔前、関西における中学受験塾の御三家といえば、浜学園、希学園、日能研関西だった。だが、現在の顔触れは異なる。希学園に代わって馬渕教室(運営はウィルウェイ)が関西中学受験塾「新御三家」として台頭。今では、灘中ほか難関校の合格実績で日能研関西も凌駕するナンバー2の座にのし上がった。
「難関校の合格実績を引っ提げて関西や東海の各地に急拡大している。馬渕の新校舎ができると、その地域の受験生を根こそぎかっさらわれる」と、関西の中学受験関係者はため息をつく。
近年は灘中の合格者数において、絶対王者の浜学園さえも射程内に収めつつあった。その馬渕の“疾走”の騎手だったのが、昨年までウィルウェイ取締役を務めていた吉田努氏だ。日本テレビの教育バラエティー番組「世界一受けたい授業」にも出演経験があり、関西と東海のあらゆる中高一貫校に太いパイプを持つ、いわば馬渕中学受験事業部の顔的な存在だった。
ところが、昨年8月、年度半ばにもかかわらず、吉田氏は馬渕を退職。ライバルだった「アップ」に電撃移籍したことで、関西の中学受験関係者に大きな衝撃が走った。
吉田氏の移籍によって、業界の地殻変動が起きるのは関西だけではない。むしろ影響を受けるのは中学受験の中心地、東京だ。
次ページから、「首都圏、東京の中学受験塾界をひっくり返したい」と語る吉田氏を直撃。新たなミッションを明かしてもらった――。
アップ 首都圏展開特命統括
吉田努氏インタビュー
――まず、関西だけでなく東海地方でも成功を重ねてきたにもかかわらず、なぜ馬渕教室の退職を決意したのでしょうか?