“脱Excel論”が叫ばれるようになったが、Excelは決して時代遅れのツールではない。世間ではまだ認知度が低いようだが、Excelは数年前に抜本的な進化を遂げ、大規模かつ高速なデータ分析に対応した。進化後の通称「モダンExcel」は、どのような点が優れているのか。本稿では、その魅力を初心者向けに解説する。(公認会計士/データアナリスト 村井直志)
「脱Excel論」が巻き起こる中で
「モダンExcel」という革命が起きた
「Excelはもう古い」――。ビジネスの現場で、いつしかそんな言説が出回るようになった。“脱Excel”を勧める記事や投稿が、メディアやSNSを賑わせる機会も増えたように思う。
だがExcelは、数年前に“大革命”と言えるほどの進化を遂げた。その有用性は目を見張るほどであり、「古い」という批判は必ずしも適切ではない。
大きく変わったポイントは、「データ収集・分析」の能力だ。
瞬時にデータを収集・整理し、そのデータをファクトベースで分析する。その上で、グラフなどによる可視化を行い、新たな発見や洞察を得る――。こうした用途に対応した新時代のExcelは、「モダンExcel」の愛称で呼ばれている。
「Power Query」と「Power Pivot for Excel」
二つの武器の強みとは?
モダンExcelでは、大別して二つのデータ分析ツールを利用できる。それが、「Power Query」(Excel上では「データの取得と変換」と表示される)と「Power Pivot for Excel」(以下、Power Pivot)だ。
なじみのない名前かもしれないが、実はExcel2016以降であれば誰でも使える。
初学者向けにざっくり説明すると、Power Queryは主にデータの取得や変換といった「前処理」を効率化する。
Power Pivotは、進化前のExcel(以下、レガシーExcel)とは比較にならないほど大量のデータを格納したり、共通点があるデータ同士を関連付けたりして、データ分析の高度化を実現する。データの関連付けに関しては、マイクロソフトのデータベース管理ソフト「Access」と同様だと考えると分かりやすいだろう。
モダンExcelを活用するには、これら二大ツールを「一体理解」する必要がある。この辺りが初学者に大きなハードルとなりがちだが、基本はそう難しくない。Power QueryできれいにしたデータをPower Pivotに取り込み、分析する。大まかな流れはこれだけだ。
次ページ以降では、モダンExcelの基礎知識とメリットをより詳しく解説していく。