マイケル・ユシーム教授Photo by Tommy Leonardi

経営陣にとって未曽有の試練が続く中、企業の倒産数は上昇の一途をたどり、経営者や幹部も、リスキリング(学び直し)なしに生き残れる時代は、遠い昔の話となった。3年後の自社の存続や自らの地位さえ確かでない激動の時代を迎え、経営陣は何をすべきなのか? リーダーシップ論の権威である米ペンシルベニア大学ビジネススクールのマイケル・ユシーム教授が上梓した著書『エッジ――10人のCEOはどのように組織の導き方を学んだか、私たち誰もが学ぶべき教訓』(未邦訳)が話題だ。同教授に、5年後も生き残れる企業リーダーの条件を聞いた。(聞き手/ニューヨーク在住ジャーナリスト 肥田美佐子)

米国の優良企業500社の約半数が
10年以内に消滅する見通し

 ユニコーン(時価総額10億ドル超のスタートアップ)が仕掛ける既存業界への「創造的破壊」、コロナ禍で高まる不確実性やデジタル化の加速、40年ぶりのインフレ、サプライチェーンの混乱、「大退職」ブームで困難を極める人材獲得競争と賃上げの圧力――。

 今、米国企業の最高経営責任者(CEO)たちは未曽有の荒波にもまれ、海図なき航海を迫られている。今やCEOや幹部もリスキリング(学び直し)で新たなスキルを学び、未知の事業や組織づくりに挑み続けなければ、企業は絶滅し、リーダーとしても生き残れない。

 リーダーシップ論の権威として知られる、米ペンシルベニア大学ビジネススクール・ウォートン校のマイケル・ユシーム教授によれば、ポストコロナ時代のCEOは、「『エッジ』(断崖絶壁)に立ち、眼前に広がる前人未到の巨大な渓谷を飛び越え、次の断崖に着地しなければならない」という。

 同教授は、昨年6月に上梓した新刊『The Edge: How Ten CEOs Learned to Lead―― And the Lessons for Us All』(『エッジ―― 10人のCEOはどのように組織の導き方を学んだか、私たち誰もが学ぶべき教訓』未邦訳)の冒頭で、米企業の「死亡率」、つまり消滅数がいかに上昇してきたかを示し、経営陣に警告を発している。

 というのも、1960年代前半に60年超だった、米国の優良企業500社(S&P500)の平均存続年数は、コロナ禍以前の10年間で、20~25年に短命化したからだ。この傾向は、コロナ禍で悪化する可能性が高く、上記500社の約半数が今後10年以内に消滅する見通しだと、同教授は同書の中で記している。

 一方、大企業の短命化より衝撃的なことがある。