大和証券は5月9日から、ゆうちょ銀行でファンドラップの販売を開始。193兆円という貯金額に対し、投資信託に回っているのはわずか2.6兆円だ。巨大な販売チャネルを得た大和証券グループ本社の中田誠司社長は、ファンドラップのシェアで国内最大手の野村證券を抑え「トップを取る」と意気込むが…。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

投資契約時の不正でゆうちょ銀の営業に制約
ようやく販売開始でも市況は悪化

大和証券とゆうちょ銀行Photo:123RF, Diamond

 5月9日に販売が始まったゆうちょ銀行の「ゆうちょファンドラップ」。ゆうちょ銀行のサイトの商品説明のページを見ると、あまり目立たないように書かれているが、この金融商品の販売をゆうちょ銀行に委託しているのは、2019年5月に日本郵政、ゆうちょ銀行との協業を発表した大和証券だ。

 大和証券グループ本社の中田誠司社長は5月18日に開かれた経営戦略説明会で、「ゆうちょ銀行は193兆円の貯金残高に対し、2.6兆円しか投資信託の残高がない。数年で1兆円の販売ができそうだ」と鼻息荒く語った。

 ただ、足元では米国株が急落した影響で、日経平均株価も不安定になっている。また日本郵政グループでは、かんぽ生命の営業マンが過大なノルマを課せられ、顧客に十分な確認をせず不利な契約に乗り換えさせるなど、大規模かつ不正な営業活動が発覚。日本郵政がこれを公式に認めて謝罪したのは、郵政と大和が協業を発表した直後の19年7月だった。

 ゆうちょ銀行でも、高齢者への投資信託の販売時に必要な手続きを怠るといった不正が発覚。これらを受けて営業体制を見直したため、大和のファンドラップの取り扱いが、協業発表から3年を経た今月にずれ込んだとみられる。

 一連のトラブルによる遠回りを経てようやく販売にこぎつけた大和の「ゆうちょファンドラップ」だが、マーケット環境の悪い向かい風の中で、大和のリテール部門の強力な武器となりうるだろうか。