業績の厳しいコミットを課されないのは社外取締役の「役得」かもしれない。およそ3週間にわたり公開予定の特集『社外取「欺瞞のバブル」9400人の全序列』の#9では、純損益が赤字かつPBR(株価純資産倍率)1倍割れで株価が「解散価値」すら下回るのに、高報酬を得た社外取100社273人の実名を全公開する。1位は1兆円を超す赤字企業だが、社外取1人当たりの報酬は約2500万円に上った。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
赤字でも高報酬!不届き企業100社を抽出
大手電力・鉄道会社が上位に浮上
最終赤字を記録しながら、社外取締役に高額な報酬を支払っている企業が実際にある。しかも株価が低迷し、PBR(株価純資産倍率。株価÷1株当たり純資産で計算)は1倍割れ。市場が評価する企業価値が、「解散価値」すら下回るとしたら――。
こんな不届きな上場企業が国内に一体、何社くらいあるのか。「連結純損益が赤字」かつ「PBRが1倍未満」という条件で、データをスクリーニングしたところ、191社が候補として残った。
特集『社外取「欺瞞のバブル』9400人の全序列』では、日本の社外取9434人を徹底評価する複数の独自ランキングを用意している。今回のランキングでは、スクリーニングした191社をさらに絞り込んで、赤字・解散価値割れ企業なのに「高報酬な社外取」のいるワースト100社と、その273人の全実名を公開する。
絞り込みのプロセスを説明すると、社外取1人当たりの推計報酬額とPBR、連結純損益の三つを評価軸として設定。総得点を1000点満点とし、点数が低い順に100社をピックアップした。
1位は1兆円を超す巨額赤字を計上したにもかかわらず、社外取1人当たりの報酬が約2500万円に上った。このほかワースト10位以内に複数の大手電力会社や大手鉄道会社、自動車メーカーなどが入った。
さらにワースト100社について、推計報酬額の大きさをチェックしていくと、14社が社外取に1000万円以上を支払っていたことが分かった。こうした会社は特に、社外取が高額報酬に見合う働きをしているかどうか厳しく精査すべきである。仮にランクインしている社外取たちが、経営に対して改善の要望や、トップの暴走の抑止力となるような発言をしていないのなら、報酬は高額な“口止め料”のようにも思えてくる。
それでは次ページで、企業名と社外取の実名に加え、受け取った報酬についても確認していこう。