社外取「欺瞞のバブル」9400人の全序列#13Photo:PIXTA

社外取締役は“最”上級国民――。ダイヤモンド編集部による上場企業3700社の社外取「全9400人」の徹底取材からはそんな実態が浮かび上がった。およそ3週間にわたり公開予定の特集『社外取「欺瞞のバブル」9400人の全序列』の#13では、社外取9400人の総報酬額を実名ランキングで完全公開する。まず前編では、上位4000人の実名と兼務社数、推計報酬額の合計を明らかにする。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)

トップ10の平均報酬額は6500万円も
世間騒がす問題児が多数ランクイン!

 自分がもらっている報酬額を、あれこれ詮索されるのは嫌なことなのだろう。日産自動車を食い物にし、海外逃亡中の元会長、カルロス・ゴーン被告(68)もそうだった。彼が起こした報酬過少記載事件の背景には、世間から批判の目で見られかねない「巨額報酬の存在を隠したかった」という動機が色濃くあったとされている。

 だが、上場企業は公器である。会社法に基づき会社から経営を委任されている取締役が、ただいるだけではなく、高い報酬額に見合った仕事を真面目にしているかどうか――。株主のみならず広く一般社会からも、高い透明性でチェックを受け、その妥当性について議論や判断の対象になることは、本来は重要な責務なのではないか。

 このことはもちろん、人数が急速に増えて、取締役会で勢力を拡大している社外取締役にも当てはまる。ただ現実には、国内で報酬額の個別開示を義務付けられているのは、1億円以上を受け取る役員に限られている。

 一方、英国では取締役全員について、報酬額を開示する義務がある。米国でも最高経営責任者(CEO)、最高財務責任者(CFO)と、そのほか報酬額上位3人までが個別開示の対象だ。

 本特集では日本の社外取「全9400人」を徹底評価する複数の独自ランキングを作成してきた。今回は、有価証券報告書のデータを基に、社外取の報酬額を独自に試算。複数社兼務の場合は、全社の金額を合算して実際受け取っている報酬額に近づけた。こうして上場企業3700社、社外取9434人を「報酬」だけで完全序列化した、実名ランキングが完成した。

 トップ10には大手商社元首脳や“プロ経営者”、外国人や学者などが名を連ねた。その中には利益相反が疑われる者、株主総会での再任賛成率が低い者、また世間を騒がす大トラブルへの監督責任が問われる者など“問題児”も交じっている。しかし、それでも平均報酬額は6557万円である。トップに至っては9000万円だ。

 あるメガバンクの社外取などは「思い付きで論点を列挙することが多く、議論の収束点や目的を考えずにいろいろと引っかき回し、現場を疲弊させることがある」と関係者から非難される始末だ。

 国や産業界が進めるガバナンス改革の主役に据えられている社外取は、今や上場企業のトップ人事など重要な経営課題を決める存在でもある。だが、社外取は果たして報酬に見合うような活躍をしているのか。あなたの会社の社外取は「お飾り」ではないのか。

 本特集は「多くの社外取が高報酬でも責任を取らずお気楽な“最”上級国民」という問題意識を持っている。次ページの兼務社数や報酬額を見ながら、ぜひ検証してみてほしい(なお、105~4022位の社外取については氏名や社名で検索できます。併せて、ご活用ください)。