11年ぶり利上げのECB
量的緩和も進める?不可解
欧州中央銀行(ECB)は7月理事会で11年ぶりの利上げに転じたが、同時に「政策波及保護手段(Transmission Protection Instrument<TPI>)」という新たな国債買い入れ手段の導入も決めた。
ユーロ圏の高インフレに対応するため7月初めに国債などの資産買い入れを終了し量的緩和をやめた後、間髪入れずに利上げに着手した一方で、新たな国債買い入れ手段を導入することは、金融政策の方向が矛盾している印象を与えるかもしれない。
ECBの説明では、TPIの目的は「域内の金融市場の分断」、つまり域内の金融市場で金利の過度なばらつきなどの不均衡が生まれるのを防ぎ、金融政策の効果を均霑させることにあるという。
だが実際、TPI導入の発表後には域内国の国債利回りのスプレッドがむしろ拡大し、市場ではTPIに懐疑的な見方が強いことを示唆した。
なぜ金融緩和の印象を与えるような措置を同時に決めたのか。一見、不可解な導入にはECB、欧州金融市場ならではの事情がある。