関西財界の雄、大阪商工会議所会頭に今春、サントリーホールディングスの鳥井信吾副会長が就任した。大阪経済の地盤沈下をどう食い止めるのか。20回超にわたり公開予定の『「大阪」沈む経済 試練の財界』の#5では、鳥井氏を直撃。大阪経済復活のために、鳥井氏はものづくりを復権すべきだと訴えた。(聞き手/ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)
中小の6割「価格転嫁できず」
本社・工場失い大阪「空洞化」
――足元の経済の動向をどう見ていますか。
新型コロナウイルスの感染拡大に加え、ウクライナ情勢や円安、原材料高騰などを背景に厳しい状況です。大阪商工会議所のアンケートでは、中小企業の約6割は価格転嫁ができていないという結果も判明しました。
業種によって異なりますが、やはり中小・中堅企業が厳しいです。飲食業や観光業、宿泊業はインバウンド(訪日外国人)がゼロになり、なんとか2年超は補助金でしのいできました。しかし、原材料価格の高騰に加え、コロナ禍の第7波もあり、まだ厳しい状況には変わりません。
――大阪経済は長きにわたり地盤沈下が進んできました。
まず、大阪に拠点を置いていた大企業が東京に本社機能を移すということが起きました。そして、1985年のプラザ合意で急激な円高ドル安が進み、すでに輸出型産業だった製造業が海外に出ていくことになります。
中小企業も大企業と共に海外に打って出るか、業態などを変えてきました。そうした動きが何十年も続いてきました。結果、関西からは本社機能だけでなく、大きな工場も消えました。
もちろん、中小企業の中には大企業の下請け構造から脱し、差別化できる製品で闘っているところもあります。けれども、全体的には空洞化してしまったわけです。
関西財界の地図も変わってきています。以前は、住友化学や野村證券なども本社は大阪でしたが、今はありません。あらゆるところで文化が変わってしまいました。
次ページでは、鳥井氏はものづくりの否定こそが現在の関西の凋落を招いたと喝破する。併せて、大阪経済の復活に向けた処方箋も提示する。鳥井新体制の幹部に大手住宅メーカー首脳を招いた目玉人事についても、その狙いを明らかにする。