「大阪」沈む経済 試練の財界#7Photo by Ryo Horiuchi

2019年に「原発マネー」の還流問題が発覚した関西電力。関西経済連合会トップを歴代4人も輩出した財界の盟主は、“指定席”である関経連副会長からも3代続けて漏れ、“活動自粛”を迫られている。20回超にわたり公開予定の特集『「大阪」沈む経済 試練の財界』の#7では、関電が財界活動を自粛する裏事情と、業界団体トップには色気を見せる関電の思惑に迫る。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

関西財界もズッコケた関電のコンプラ意識
原発マネー問題「不適切だが違法ではない」

 2019年10月2日、大阪市北区の関西電力本店からわずか北西300メートルにある堂島リバーフォーラムに当時の八木誠会長、岩根茂樹社長が無数のフラッシュを浴びながら姿を現した。

 八木会長と岩根社長を含む関電の役員が、高浜原子力発電所が立地する福井県高浜町の元助役から総額3.6億円相当の金品を受け取っていた「原発マネー還流問題」で、「2度目」の記者会見に臨むためだった。

 その1週間前、岩根社長が原発マネー還流問題の発覚を受けて急きょ記者会見を開いたものの、「回答は差し控える」を連発。情報公開に後ろ向きな関電の姿勢が関係各所から集中砲火を浴びて、「出直し」を余儀なくされた。

 原発マネー還流問題は、企業のトップ自らが金品を受領する前代未聞の不祥事で、その初動対応のまずさもあって、関西財界や電力業界は八木会長と岩根社長の辞任は不可避とみていた。そして八木会長も出席した2度目の会見は、「辞任会見」になると踏んでいた。

 ところが、である。八木会長と岩根社長は、早々に辞任を否定したのだった。

 さらに八木会長は「引き続き財界活動に貢献したい」と関西経済連合会の副会長職にとどまる考えを示した。岩根社長に至っては原発マネー還流問題について「不適切ではあるが、違法性はない」と“名言”を放った。

 八木会長と岩根社長の発言に、在阪企業のある幹部は「ズッコケた」という。「関電にはガバナンス(統制)もコンプライアンス(法令順守)の意識はかけらもないことが、如実に現れた」と開いた口が塞がらなかった。

 この会見で“大炎上”し、その後八木会長と岩根社長は辞任を迫られた。財界活動でも八木会長は関経連副会長の座を、岩根社長は業界団体の電気事業連合会会長をそれぞれ退いた。原発マネー還流問題によって、関電は関西財界の盟主から陥落したのだった。

 次ページからは、まず関電が関西財界の盟主として君臨してきた歴史的な背景をひもとく。さらに、度重なる不祥事で起きた社内の主流・非主流派の人事序列の大逆転が引き起こした財界活動への影響を明らかにする。

 一方で、関電は電事連トップをうかがうべくすでに水面下で動き始めている。財界活動を自粛する傍ら、関電が業界団体を押さえにいく思惑についても解き明かす。