出世・給料・人事の「新ルール」#3Photo:Olivier Le Moal/gettyimages

経営者のリーダーシップがものをいう時代。近年誕生した社長には、どのようなタイプが選ばれているのか。新社長24人のキャリアを徹底分析したところ、意外な結果が炙り出された。特集『出世・給与・人事の新ルール』(全10回)の#3では、新社長の「タイプ」を独自に分類、そのトレンドを詳述する。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

ドメスティックな日本の経営者
旧来型人材に“退場宣告”

「日本企業の部長の年収は、タイよりも低い」――。そんなセンセーショナルなフレーズで世間の話題を集めたのが、今年5月、経済産業省が公表した「未来人材ビジョン」というレポートだ。

 政府がわざわざこんなレポートを公表するのは、日本企業の将来的な雇用・人材の問題に対する危機感が、絶望的なまでに希薄だからだ。

 新卒至上主義、長期安定雇用、メンバーシップ型組織――。かつて日本の高度経済成長を支えてきた「日本型雇用システム」は、崩壊しつつある。

 デジタル化、脱炭素化、米中分断に代表される世界のデカップリング(分断)などにより、従来の産業構造は大きな変革を迫られている。当然、ビジネスの現場でも変化に対応できる、大胆かつ柔軟な人材が求められるようになった。

 とりわけ、経営者のリーダーシップがものをいう時代だ。将来が見通しづらい時代だからこそ、独自の経営哲学と先読み力によって、重要な決断を実行できる経営者が求められている。

 意思決定がなければ、組織は前進できないからだ。このような有事に、前例踏襲型の日本人経営者は向かないとされる。

 未来人材ビジョンでも、「日本企業の経営者は、生え抜きが多く、同質性が高い」「グローバル競争が過熱する中でも、ドメスティックな経営者が多い」などとこき下ろされている。

 実際に、日本人経営者の内弁慶ぶりはデータでも明らかだ。CEO(最高経営責任者)のキャリアで比較すると、他の企業での経験があるCEOの構成比は、米国94%、中国66%であるのに対して、日本は18%にとどまる。8割強が純粋培養の生え抜き社長だ。

 また、CEOの国籍を見ると、米国は米国出身者が85%だが、日本は日本人が100%。完全なドメスティック経営という始末である(Strategy&「2018年CEO承継調査」)。

 もちろん、日本企業とて手をこまねいていない。隗より始めよといわんばかりに、新社長の顔触れを見ると、変革を率先できる人材が重用され始めている。

 次ページでは、主な新社長を、これまでのキャリアや就任パターンといったタイプごとに分類したリストを掲載する。

「グローバル」「理系」といった流行のスキルだけでなく、“見せかけの社長交代”という権力構造の問題点を持つ企業の存在も浮き彫りとなった。

 新社長の持つ「スキル」から浮かんできた次世代人材の条件とは何か。次ページでは、最近社長に就任した24人のスキルと経歴をまとめた「図解」をお見せすると共に、トップが備えるべき条件を明らかにしていこう。