ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに世界経済が分裂し、「一物二価」の時代が到来する可能性が出ている。長期的には資源価格が上昇する見通しで、日本企業は「一物二価」時代での価格変動リスクに備えておくべきだ。(マーケット・リスク・アドバイザリー共同代表 新村直弘)
世界的な景気後退は
2023年4月以降か
ロシアのウクライナ軍事侵攻を受けて1バレル当たり140ドルに迫った原油価格は大きく水準を切り下げ、国際的な原油価格の指標である「北海ブレント」は90ドルをうかがう展開となった。水準が切り下がったといっても、原油価格は高い水準を維持している。
原油価格は需要を左右する景気との連動性が高い。景気はおおむね4年~5年の周期で好不況を循環しており、製造業PMI(購買担当者景気指数)を元にすると前回の景気のピークは、2021年の第4四半期頃だ。このため、次の景気の底は23年の後半頃になると予想される。
不況入りのタイミングを計る上で参考になる米国の2年債・10年債のスプレッドは、今年4月にマイナスとなっており、7月以降はネガティブ・スプレッドが恒常化している。過去の例と比較すると、このネガティブ・スプレッドが発生してから1年程度でリセッション(景気後退)入りしている。
これを今の状況に当てはめると、23年4月~7月にリセッション入りする可能性があると予想される。