有名企業の“コミュニケーションパーク”に見る、オフィス環境の大切さ

オーラルケアや健康食品などの消費者向け商品や金属加工部品、接着剤メーカーとして知られるサンスターグループが、2021年3月に開設したサンスターコミュニケーションパーク(大阪府高槻市)――広い敷地内にオフィスビルと芝生広場があり、社員の働きやすさの実現とともに地域住民との交流による共創を目指している。「CASBEE-ウェルネスオフィス認証」の最高評価を取得し、「2021年度グッドデザイン賞」を受賞した、そのパークの「素顔」を、関係者への取材とともに「HRオンライン」がレポートする。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/HRオンライン)

約1万8000平方メートルの敷地にある、3階建てオフィスビル

 2019年の4月から働き方改革関連法が順次施行され、コロナ禍でテレワークが普及したこともあって、就労スタイルの多様化が進んでいる。組織ごとに濃淡はあるものの、従業員の働き方の選択肢が増え、オフィスへの出社をいっさいなくした企業もあるようだ。直接に顔を合わせなくても、ICTツールで職場のメンバーやビジネスパートナーと対面することが平常となり、コミュニケーションのあり方が大きく変容している時代。はたして、 “リアル空間としてのオフィス”に人が集う意味はあるのだろうか――サンスターグループ(以下、サンスター)が2021年3月に開設した「サンスターコミュニケーションパーク」にその答えの一端を求めて、高槻市内(大阪府)の施設を訪れた。

 3階建てのオフィスビルと芝生広場からなる敷地は約1万8000平方メートル。これは、サッカーのフィールドの約2.5倍の面積で、近隣に高層建築物が少ないこともあって、まさに、広々とした「パーク(公園)」を思わせる。もともとはサンスター技研の生産工場があった場所で、商業でにぎわう高槻市駅(阪急電鉄京都本線)から徒歩圏内という立地が魅力的だ。

 総務部・井上賢一さん(コミュニケーション推進グループ長)の案内で、まず、延床面積約7000平方メートルのオフィスビルに入った。総合受付の正面にはショールームがあり、創業90年のサンスターの歴史をたどるように、さまざまなオーラルケア商品や健康食品のサンプルが並んでいる。「サンスター」と聞けば、「G・U・M」ブランドに代表される歯ブラシや歯磨き粉を思い浮かべるが、事業の起点は自転車タイヤの修理用接着剤の販売だ。社史を刻む壁面前には、その創業当時を振り返る、年代物の自転車が展示されていた。

 同じ1階には、席数100のカフェ・レストランと、150名が収容可能なコミュニケーションホールもある。フロアは窓ガラスが大きく、建物の中心が吹抜け構造になっているので、天井を忘れさせるほどの開放感で、採光の良さが際立っていた。オフィスビルというよりもコンサートホールのロビーといった雰囲気だ。平日の早い時間に訪れたこともあって、カフェ・レストランは無人だったが、テーブルとイスの配置にゆとりがあるので、ランチ時でも窮屈には感じないだろう。

 サンスター商品などのコマーシャル映像が流れる巨大モニターを見上げながら、横幅のある階段で上階へ。2階と3階が社員執務エリアになっている。来訪者用のICカードでゲートを通過し、フロアを見渡すと、人影の少ない1階と異なり、予想以上に多くの社員の姿があった。

「建物自体のキャパシティは400人ほどで、毎日の出社人数は150人から200人くらいで推移しています。出社の頻度は部門によって異なりますが、午前中は自宅で仕事をして、昼からオフィスに出てきたり、海外の事業所とのミーティングがあるときに良いネット環境を求めて出社してくる社員がいたり……と、さまざまです」(井上さん)

 サンスターはコアタイムのないフレックスタイム制を採用している。夜間は21時の退出を余儀なくされるが、いつ出社し、いつ退社しても構わない。さらに、社員執務エリアはフリーアドレスなので、どこで仕事をするのも自由だ。役員の個室がないことも特徴のひとつと言えるだろう。

サンスターコミュニケーションパーク

住所:大阪府高槻市明田町 7-1 
施設従業員数:約400名 
敷地面積:18,341.12平方メートル
建築面積:2,672.27平方メートル(延床面積 7,012.23平方メートル)
各施設:オフィス/サンスターグループ各社のオフィス
一般の方向け施設/芝生広場、庭、体験ショールーム、高槻・サンスターの歴史紹介コーナー、健康道場監修のカフェ・レストラン(席数100席)、コミュニケーションホール(最大150名収容可能)、モニタールーム
*一般の方向け施設は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、現在(2022年10月末現在)は、開放を延期中。