証券会社や銀行が富裕層向けの運用商品としてこぞって販売してきた「仕組み債」。空前の低金利時代に高金利が享受できる商品として人気を集めてきたが、実は株価上昇時にはリターンが小さいにもかかわらず、下落時の損失が大きいハイリスクミドルリターンの商品なのだ。資産が10分の1になるほど大損してしまったという富裕層も珍しくない。相次ぐ被害に金融庁が金融機関へイエローカードを突き付けている。特集『円安・金利高・インフレに勝つ!最強版 富裕層の節税&資産防衛術』(全16回)の#5では、にわかに批判が高まる仕組み債のカラクリとリスクについて、富裕層の資産運用の専門家が解説する。(アレース・ファミリーオフィス代表取締役 江幡吉昭)
金融庁がついに仕組み債の販売に「待った」
なぜ人気になりなぜ多額の損失を生んだのか
ここ最近「仕組み債」が新聞をにぎわせています。金融庁も警戒を強めています。2022年7月~23年6月の金融行政方針で、仕組み債を名指しし、銀行や証券会社の販売体制やガバナンスなどを重点検査する姿勢を打ち出したのです。「すでに大手金融機関と対話を始めており、必要とあらば行政処分も視野に入れる」との金融庁幹部のインタビューも報道されています。
こうした流れを受け、大手証券会社や地方銀行系の証券会社、そして大手のネット証券に関しては売り止めをしている一方、いわゆる地場証券などは今も変わらず販売しているところもあります。いずれにせよ、販売に際しての適合性(事前了解などのプロセス)チェックは日々厳格になっています。
そもそも、仕組み債とは原則1000万円以上、オーダーメードの商品では3000万円以上の投資単位からあります。そして対面営業の証券会社や銀行に1000万円から億円単位で資産を預けている人の多くが、一度は投資勧誘を受けたことがあるはずのリスクの高い商品です。そして、資産10分の1の憂き目を見た投資家もいます。
実はこの種の金融商品で損をする人は、1990年代は機関投資家であったのが、2000年代に中小法人に移り、今は個人投資家になっています。
仕組み債という金融商品について、なぜリスクが高いのか、どうして金融機関と投資家が飛び付いたのか。そしてそもそもこうしたデリバティブ商品はなぜ歴史的に波乱を呼んできたのかも含めて、次ページでは、金融商品に詳しくない方でも分かるように易しく解説したいと思います。