大減税で政権が崩壊した英国
総合対策に日本国債市場は“無風”
英国の政治・経済情勢で9月末以降、国際金融市場は大揺れとなった。
“財源なき”1050億ポンド規模(約17.9兆円、1ポンド=170円換算)の財政拡張策を掲げて保守党総裁選を勝ち抜いたはずのトラス前首相は、ポンド急落と英国債暴落(長期金利急上昇)の形で反応した市場に追い込まれ、1カ月ともたずに退陣した。
後任には財政再建派のスナク新首相が就任し、金融市場は徐々に落ち着きを取り戻しつつあるものの、予断を許さない状況だ。
他方、財政事情が主要国で最悪の日本では、岸田政権が、物価高対策を名目に英国を上回る規模の総合経済対策で、大盤振る舞いの補正予算編成を打ち出した。
歳出規模は28.9兆円で、そのうち22.9兆円、約8割を赤字国債で賄う算段だ。それでも日本の財政運営は目下のところ、日本銀行が10年国債金利を完全に押さえ付けていることで表面上は無風だ。
ただし背後では円安が不気味に進展しつつある。
この日英両国の財政運営が今後たどる道筋は、おそらく大きく分かれることになるだろう。その最大の鍵は両国の中央銀行の、これまでの、そしてこれからの政策運営姿勢が握っている。