2022年も年末を迎え、2023年3月卒業の学部生&大学院生(以下、23卒)の新卒採用も終盤に差し掛かった。すでに2024年3月卒業の学部生&大学院生(以下、24卒)を対象とした採用活動にシフトしている企業がほとんどだろう。採用計画も大筋固まっていると思われるが、24卒は、23卒以上に新卒採用戦線が激化しそうだ。毎年、独自の調査* に基づいて、「学生の就職活動の総括」と「企業の採用活動の総括」を公表している株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソースの高村太朗さん(経営企画室 室長)へのインタビューを通して、24卒採用の課題と対応をまとめた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/菅沢健治)
*株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース「採用・就職活動の総括」
23卒採用では“早期化”と“売り手優位”が加速
2023年3月卒業の学部生&大学院生(以下、23卒)を対象にした企業の採用活動で目立ったのは、“早期化”と“売り手(学生側)優位”の加速だ。早期化についていえば、例年、大学3年生の3月から大学4年生の7月までが選考の本番であり、その期間に変わりはないが、企業と学生の接触時期やプロセスの進み方が全体的に前倒しになってきている。
高村 “早期化”の大きな理由は、企業側の動きが早まったことです。昨年2021年までのコロナ禍では先行きの不透明感とさまざまな行動制限があって、企業の採用活動にもブレーキがかかりました。そのため、「採用予定数をクリアできればいいけれど、未達でもしかたない」という考えの企業が多かったのです。しかし、今年2022年はウィズコロナの状況を受け止めたうえで、「採用予定数をなんとしても達成する」という姿勢に多くの企業が変わってきています。採用人数もアフターコロナを見据えて増やしているケースが目立ち、こうした企業側の採用意欲の高まりが“早期化”をもたらしています。
“売り手(学生側)優位”――これは、そもそも、新卒採用において10年くらい前から続いています。背景には少子高齢化による若年労働者不足という大きな流れがあり、コロナの流行がなければ間断なく続いていたでしょう。23卒の採用市場でその状況が戻った感じです。
もう一つ、23卒採用でのポイントはインターンシップ(以下、インターンシップ類)の位置づけがさらに高まったことだ。企業は採用活動のために学生と随時接触していく。かつて、その最初の機会は、就職セミナー・就活イベント(合同説明会など)、企業説明会といったものだったが、近年はインターンシップ類に大きくシフトしている。
高村 インターンシップ類へのシフトはデータにも表れています。小社の調査では、インターンシップ類を「導入・実施した」企業は、従業員501名以上企業で81.5%(22卒=80.3%)、従業員500名以下の企業で61.0%(22卒=55.2%)と着実に増えています。中小企業ではまだ増加する余地もあり、今後もインターンシップ類の実施率は高い水準で推移するでしょう。インターンシップ類はすでに採用活動において重要な位置を占めているといえます。
高村 学生の動きもこれに見合った変化が起こっています。一人あたりのWEB(プレ)エントリー数は23卒で平均41.2社となり、22卒(37.3社)から3.9社増加しているのです。また、WEB(プレ)エントリーの開始時期は「大学3年の6月」が23.9%と22卒(17.7%)から6.2ポイント増加する一方、採用広報解禁時期である「大学3年の3月」は7.9%と、22卒(15.6%)から7.7ポイント減少しています。
高村太朗 Taro TAKAMURA
株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース
経営企画室 室長
1998年、株式会社ダイヤモンド・ビッグ社入社。法人営業として、首都圏と大阪で大手企業を中心に新卒採用支援や人材開発支援を担当。「ダイヤモンド就活ナビ」編集長、営業企画室長を経て、現職。「ダイヤモンド就職人気企業ランキング」「採用・就職活動の総括」をはじめ、新卒採用マーケットに関する調査・分析に携わっている。