日本銀行総裁の交代によって、日本経済や金融政策、株式市場にはどのような変化が生じるのか。市場経験約40年のベテランエコノミスト、神谷尚志氏が大展望した。
新日銀総裁は“異例”の
金融政策を引き継ぐことに
日本銀行の総裁が、今春に交代する。黒田東彦総裁の任期は4月8日までで、政府は雨宮正佳副総裁に就任を打診したと報じられている。
日銀総裁人事がセンセーショナルな出来事である理由は、現総裁の黒田氏の金融政策が特異で、新総裁のかじ取りが注目されるからだ。黒田氏は13年3月20日に日本銀行総裁に就任。ただちに第2次安倍政権が掲げた経済政策「アベノミクス」の3本の矢のうちの第1の矢(大胆な金融政策)を担った。
これは異次元の金融緩和と呼ばれ、国債やETF(上場投資信託)の大量買い入れ、金融機関が日銀に預ける当座預金へのマイナス金利導入、長期金利の誘導水準を定める長短金利操作などを次々と導入してきた。
言ってしまえば、どれも無理がある政策だったと思える。昨年9月末時点では国債発行残高(国庫短期証券を除く)の半分以上を日銀が保有。日銀が保有するETFは、株式市場の時価総額の約7%に相当する。長期金利は本来市場が決めるものであるが、日銀が強引に制御し、国債市場機能が損なわれている。そして、金利という概念が失われ、預貯金の魅力が失われているのだ。
現在の金融政策は特異で行き詰まっていることから、新総裁の下で、現政策路線の修正が進められると予想される。修正がどのように進められていくかは現時点で不透明だが、経済・金融・株式市場への影響について以下、考えてみたい。