2024年からリニューアルされるNISA制度。株式市場からは評判の悪い岸田政権だが、新NISAについては非課税限度額が大幅に拡大され、制度も恒久化されるなど想定外の「満額回答」となった。だが制度拡充と引き換えに、資産形成の「自助努力」が一層求められるのは間違いないだろう。正しく活用しないと、老後資金に差がつく可能性があるのだ。特集『インフレ&金利上昇到来!騙されないための投資術』(全22回)の#1では、新NISA制度の全貌と勘違いしやすい七つのポイントについて解説する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
年間360万円まで投資枠が拡大
売却後の投資枠の再利用も可能に
「満額回答以上」――。2022年12月にNISA制度(少額投資非課税制度)の拡充方針が示された。「岸田ショック」など株式市場からやゆされてきた岸田政権ではあるが、新しいNISAについては市場関係者の期待を上回る満額回答となった。
気になる改正点を見ていこう。従来のNISA制度は「一般NISA」または「つみたてNISA」のどちらかを選択する必要(1年ごとに切り替えは可能)があったが、新NISAではつみたてNISAの後継的存在の「つみたて投資枠」と一般NISAの後継的存在の「成長投資枠」を併せて利用できるようになった。
非課税限度額も、一般NISAは年間120万円、つみたてNISAは年間40万円だったが、新NISAではつみたて投資枠の年間120万円と成長投資枠の年間240万円を合わせると年間360万円まで拡大した。生涯非課税限度額も1800万円まで増加する。
また、途中で売却した場合も、投資枠の再利用が可能になる。「ほったらかし」が基本だった従来の制度よりも、使い勝手の面でも改善している。
とはいえ、喜んでばかりはいられない。楽天証券経済研究所のファンドアナリストの篠田尚子氏は「正しく資産運用に取り組んだ人と、それ以外の人の格差が広がる可能性が高い。ライフプランニングも含めてお金と向き合ってほしい」とアドバイスする。
金融審議会市場ワーキング・グループの報告書を基にした「老後2000万円問題」は記憶に新しいが、インフレが進行すると老後資金は2000万円でも大幅に不足する可能性がある。政府は「資産所得倍増プラン」を掲げているが、裏を返せば税制優遇のある資産運用制度を充実させたので、老後資金は「国民自らが確保してください」ということである。
さらに岸田政権下では、相続税や贈与税など課税強化メニューがズラリと並んでいる。深野康彦・ファイナンシャルリサーチ代表は「先にNISAを拡充させて、その後に金融所得課税を引き上げる可能性もある」と指摘する。
個人投資家にとって数少ない武器である新NISAの活用は、資産形成を有利に進めるためにも必須といっていい。次ページ以降、新NISAの詳しい仕組みと使い方、さらには投資中級者ですら勘違いしがちな七つのポイントについても紹介していこう。