営業収益8000億円をうかがうインターネット金融コングロマリットを20年余りで築き上げたSBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長も、御年72歳だ。異形の経営者の後継候補として3人の名前が挙がっているが、最強ネット金融帝国の“賞味期限”も迫っている。特集『ネット証券 ゼロの衝撃』(全6回)の#3では、後継候補の人物評とともに、北尾氏の過去の発言や著作の記述から固有のリスクを検証する。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
睡眠時間は4時間半のモーレツ
中国古典への知見を生かした発言も
「私も来年早々には七十二歳になり、中国宋末時代の朱新仲が唱えた『人生の五計』のうちの『老計』や『死計』を真剣に考える年になりました(中略)『死計』はいかに死すべきか、ということですが、これは残された日々をいかに生くべきかということです」――。
昨年12月に出版されたSBIホールディングス(HD)会長兼社長の北尾吉孝氏の最新の著書『人間学のすすめ いかにして身を修めるか』(致知出版社)の前書きには、こう記されている。
北尾氏のエネルギッシュな仕事ぶりは「1日4時間半の睡眠で、深夜まで海外のデジタル金融の情勢を調べている」(SBIHD関係者)など、社の内外共に有名であるが、1月21日に誕生日を迎えて現在は72歳となり、心に思うところがあるのかもしれない。
孫正義氏が率いるソフトバンク(現ソフトバンクグループ)から1999年にスピンオフし、営業収益8000億円をうかがう一大インターネット金融コングロマリットを築き上げた北尾氏が、戦略の全てを統べる状況に死角はないか。
後継者と目される主要子会社トップの人物像と、他の金融大手グループとの関係を探る。
加えて、東洋思想や中国古典の知識を生かした多数の著書を世に放ち、金融界のオピニオンリーダーとしての顔を持つ北尾氏のこれまでの発言や記述を基に、その問題点と人物像にも迫ってみたい。