不祥事が相次ぐ東レで、新たな品質不正が発覚した。高架鉄道の防音壁に使用される東レ製の高欄が、設置からわずか5年でひび割れるなど激しく劣化し、高架下の遊歩道に剥落したのだ。原因は製作時の不具合とされる。問題の高欄は、九州旅客鉄道(JR九州)、東武鉄道、京成電鉄、南海電気鉄道など全国の鉄道会社で使用されていることがダイヤモンド編集部の取材で判明し、東レは無償で交換する“リコール”に動き始めた。特集『東レの背信 LEVEL3』(全5回)の#1は、その衝撃の実態を明らかにする。(フリーライター 村上 力、ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
鹿児島のJR九州駅でFRP高欄に欠陥
「経年劣化に強い」はずが5年で剥落
問題の繊維強化プラスチック(FRP)高欄は東レが2001年に開発した。炭素繊維と樹脂による一体型成形品で、重さはコンクリート製の10分の1と、軽量で作業性に優れ、経年劣化に強いとされる。
「開かずの踏切」対策で全国的に実施されている鉄道路線の連続立体交差事業などに使用され、東レは開発当初に年間売上高を100億円と見込んでいた。
だが、開発から20年たった一昨年、思わぬ欠陥が露見する。16年に高架開業した九州旅客鉄道(JR九州)指宿枕崎線の谷山駅(鹿児島市)周辺に設置したFRP高欄の一部が、21年5月に剥落し、高架下の遊歩道に落下したのだ。
その後のJR九州の点検で、谷山駅周辺に設置した高欄約2400枚のうち、約8割の1800枚にひび割れなどの欠陥が見つかった。東レ製のFRP高欄は経年劣化に強いどころか、わずか5年で腐朽する代物だったのだ。
JR九州は養生テープやネットによる応急処置を行い、東レに製品不具合の可能性について調査を依頼。昨年10月までに東レから、剥落の原因が「製作時の表面処理の不具合」であるとの報告を受けた。東レは来年3月までに、全ての遮音壁を交換するなど大規模補修を行うとしている。その費用は全額東レの負担であり、いわゆるメーカーが無償交換する“リコール”である。
問題はこれだけにとどまらない。東レの欠陥製品をつかまされたのは、JR九州だけではないからだ。
直近約10年間に高架化工事を行った東武鉄道、京成電鉄、南海電気鉄道でも、FRP高欄の品質に懸念があるとして、東レがリコールに向けた調整を行っていることが、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。