わが子の塾選びに悩む親は多い。つい塾の広告に躍る難関校の合格実績から判断しがちだ。しかし、子どもの学力や志望校を鑑みて、その塾が最適とは限らない。「難関校よりも中堅校に強い」「特定の中学校に強い」など、塾それぞれに強みがあるからだ。そこで、特集『わが子が伸びる中高一貫校&塾&小学校』(全29回)の#3では、関西と東海の主要塾について、最新2023年入試を含めた過去16年間分の合格実績を大分析。子どもを伸ばせる塾の「合格力」を明らかにする。併せて灘中の合格者数で番狂わせが起きた関西塾業界の最新動向を見る。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫,同編集部 宮原啓彰)
西の天王山の戦いで起きた
「番狂わせ」の理由とは?
今年1月、関西の中学受験塾の覇権争いに大異変が起きた。それは西の最難関校、灘中の合格実績において、“番狂わせ”が起きたのだ。
灘中は全国区の超名門校でもあるが、関西における存在感はまさに別格。その合格者数を競って、関西の主要塾は毎年しのぎを削ってきた。
2023年入試で、関西の名門塾、浜学園の灘中合格者は92人と、前年から4人減らしたものの19年連続で王者の地位を堅持。近年は、その浜学園に追い付き追い越せと破竹の勢いで灘中合格者を積み上げてきたのが、馬渕教室(運営はウィルウェイ)という構図だった。21年には、その前年の57人から大躍進して71人の灘中合格者を出し、馬渕は関西ナンバー2の座を射止めた。ところが、22年は同70人と急ブレーキがかかり、そして今年は60人と大幅に失速したのだ。
その理由は、昨年の本特集『進学塾「馬渕教室」急成長の立役者が電撃移籍で激白「5月に新塾で悲願の東京進出」』で述べた通り、馬渕の中学受験部門躍進の立役者だった吉田努氏がライバル塾のアップ教育企画に電撃移籍したことにある、と関西塾関係者の間ではもっぱらの評判だ。
次ページでは、馬渕を追い抜き大躍進した希学園の強さの秘密を明らかにする。さらに、関西と東海エリアの主要塾の合格校の平均偏差値を求めた「主要塾の『合格力』ランキング」をはじめ、主要22塾がどのレベルの中高一貫校にどれだけの合格者を出しているかを算出した「学校偏差値ランク別合格者ウェート」、「合格力と塾の規模の相関図」「有名中高一貫校における主要塾の合格者数」など、いずれも塾選びにきっと役立つ八つの図表を一挙掲載する。
塾最新情報と、これらの図版にわが子の学力や志望校を当てはめて考えていけば、子どもと塾の致命的なミスマッチは起きにくくなるはずだ(首都圏編は、4月10日(月)配信の本特集#15『中学受験塾「合格力」ランキング【2024入試版・首都圏21塾】2位希学園(首都圏)、1位は?』参照)。
では、大躍進の希学園を超えて西の合格力1位になった塾はどこなのか、その意外な名前を次ページで見てみよう。