燃えているドル紙幣Photo:PIXTA

SVB(シリコンバレー銀行)の破綻に端を発した金融不安は足元和らぎ、市場は平静を取り戻している。株価も反騰している。しかし、金融機関の融資姿勢は厳格化しており、利上げの代替効果をもたらしつつある。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)

SVBに端を発した金融不安は
ひとまず収まりつつある

 米国のSVB(シリコンバレー銀行)の突然の破綻をきっかけに世界的な金融不安が広がるなか、欧州ではスイス大手銀行であるクレディ・スイスの信用不安が高まったが、クレディ・スイスについては同じスイスのUBSによる救済合併という形で決着した。

 米国においてはSVBに次いでシグネチャー・バンクが破綻し、他の地方銀行全体への波及が懸念されたが、FRB(米連邦準備制度理事会)が銀行向けの新たな流動性供給措置であるBTFP(銀行ターム・ファンディング・プログラム)を講じ、多くの米銀がBTFPや連銀貸し出しによって手元流動性を確保するなか、こちらも落ち着きを取り戻しつつある。

 米国債市場では、FRBが金融不安を落ち着かせるための利下げを行うのではないかとの思惑などから2年債利回りが3.75%まで低下するなどしたが、市場の落ち着きをにらみながら4.0%台を回復。年内利下げとの声も弱まりつつあるが、ただ、2年債利回りが一時5.0%台に乗っていたことを思えば、大幅な利上げへの期待は完全に収縮した格好だ。

 パウエルFRB議長は3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)の後の会見で「信用状況の引き締まりは利上げの代わりになり得る」と話した上で、インフレ抑制のための追加の利上げそのものは必要であるとの認識を示した。

 FRBの監督責任ともいえる銀行破綻については、SVBが特殊ケースであることを強調しながらも、今後、銀行監督機能を強化すべきであると認めた。

 今回の金融不安がいずれ銀行のリスク許容度低下(つまり信用収縮)を招くことも「引き締め効果」と考え、大幅な利上げの必要性が低下したことも認めた格好だ。市場参加者としては実際の金融政策がいかなるものとなっていくのかについて、非常に難しい判断を迫られることになりそうだ。

 次ページ以降、金融不安が「引き締め効果」をもたらし、利上げの代替となるメカニズムを検証していく。