企業の成長を実現していく“ワケあり人材”採用&登用のススメ

働き方改革やダイバーシティ&インクルージョンの推進で、企業にはさまざまな人が在籍し、それぞれのスタイルで働くようになった。しかし、まだ、就労時間や場所に何らかの制約があり、希望する職に就けない人も多いのではないか。「就労時間や場所に制約あり」――そんな“ワケあり人材”に、企業はどう向き合い、ともに、どのように成長していけばよいのか。経営コンサルティング会社での勤務を経て、現在は成熟企業の事業創造支援などを行う筆者(東加菜さん/michinaru株式会社 マーケティング・広報担当)が論考する。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)

“人材”に対する企業の取り組み姿勢が重要な時代

 昨今、ESG経営やSDGs(持続可能な開発目標)への認知・関心の高まりにより、地球環境や人材雇用、多様性の尊重などに対する企業の取り組み姿勢が企業価値を形づくる重要な要素になっています。

 HRの領域でも2020年9月に経済産業省が公開した「人材版伊藤レポート」を契機に、人材を“資源”ではなく“資本”として捉え、積極的に人材に投資を行い、企業価値を高めていく「人的資本経営」が注目されるようになりました。2021年にコーポレートガバナンス・コードの改訂による人的資本項目の追加がなされたとともに、今年(2023年)の4月からは、上場企業を対象に女性管理職比率や男性の育児休業取得率、男女の賃金格差といった項目についての情報開示の義務化が始まりました。

 働く現場に目を移せば、ジェンダーギャップや雇用格差、従業員エンゲージメントの低さなど、さまざまな課題が山積していることがわかります。

 来たる超高齢化社会を見据え、生産年齢人口の減少をはじめとする課題先進国と言われる日本において、これからの企業経営や人事部門にとって大切なことは何か――私は、就労者自身が多様な働き方を選べるようになることに加え、企業側が、雇用形態による待遇格差を解消し、働く意欲にあふれる“ワケあり人材”の就労機会の提供や積極登用を行い、就労者の働きやすさと働きがいを実現することだと思います。それが、企業の成長や発展につながるはずです。

 本稿は、「企業の成長を実現していく“ワケあり人材”採用&登用のススメ」と題し、社会・企業・社員(正規雇用&非正規雇用)の“三方よし”を実現していく経営・人事戦略について考えていきたいと思います。