衆院財務金融委員会で答弁する日銀の植田和男総裁衆院財務金融委員会で答弁する日銀の植田和男総裁 Photo:JIJI

植田総裁は初会合で過去25年間の
金融政策レビュー実施を決める

 4月27・28日、植田和男・日本銀行総裁の就任後初となる金融政策決定会合が開催された。同会合では、デフレが始まった1990年代後半以降の金融政策運営について、1年から1年半程度の時間をかけてレビューを行うことが決まった。

 植田総裁は4月10日の就任記者会見にて、デフレを脱却するために長年続いてきた非伝統的な金融政策についての理解を深め、将来の金融政策の参考にするための点検や検証があってもよい、という問題意識をすでに示していた。このため、今回の決定はサプライズではない。

 黒田総裁時代の10年間の異次元金融緩和からの出口に関心が集まる中、25年間をレビューするという決定は意外感があったかもしれないが、この問題意識は大事だ。

 黒田東彦・前総裁就任時から続く量的・質的金融緩和は突然現れたものではない。物価下落が続くようになった90年代後半以降、デフレ脱却の必要性が叫ばれるようになった。そして金利低下余地がなくなる中、ゼロ金利政策、時間軸政策、量的緩和政策と非伝統的な金融政策が打ち出されるようになった。

 量的・質的金融緩和は、この流れの延長上にある。政府・日本銀行の共同声明(アコード)で金融政策を政府主導にし、物価目標を2%に引き上げ、それを実現するために日銀による長期国債などの資産買入れペースを急加速させるといった、異次元の要素を加えたものだ。異次元金融緩和の出口を抜けても、デフレ脱却のための非伝統的な金融緩和を続ける状況は続く。この二つ目の出口を抜けなければ金融政策の正常化には至らない。

 もっとも、この出口を抜けることは、25年間の金融政策を否定することにもなりかねず、政治的にはかなりハードルが高い。5年間の植田総裁の任期中に実現するかどうかもわからない。具体的な金融政策の変更を念頭に置いた点検や検証としてではなく、長期的な観点からの論点整理としてこのレビューは始まることになろう。

 一方、異次元金融緩和の副作用も念頭に置いた金融政策の変更は、このレビューとは関係なく行われる。初回の金融政策決定会合でも植田総裁流の政策の見直しが始まっている。