新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行したことで、コロナ禍によって大打撃を受けた業界・企業の業績の完全復活に対する期待が高まってきた。上場70社超、23業界における月次の業績データをつぶさに見ると、企業の再起力において明暗がはっきりと分かれている。前年同期と比べた月次業績データの推移から、6つの天気図で各社がいま置かれた状況を明らかにする連載「コロナで明暗!【月次版】業界天気図」。今回は、2023年4月度の物流編だ。
コロナ特需は終わり?宅配「ゼロ成長」見込みの真相
物流の主要3社が発表した2023年4月度の月次業績データは、以下の結果となった。
◯ヤマト運輸(ヤマトホールディングス〈HD〉)の宅配便取り扱い実績
4月度:前年同月比98.7%(1.3%減)
◯佐川急便(SGホールディングス〈HD〉)のデリバリー事業の取扱個数
4月度:同95.6%(4.4%減)
◯日本通運(NIPPON EXPRESSホールディングス〈HD〉)の国内売上高
4月度:同82.3%(17.7%減)
3社とも前年実績を下回った。特に日本通運は前年同月比2桁減で、苦戦しているように見える。
物流業界は、新型コロナウイルス感染症拡大の状況下で業績を伸ばした数少ない業界の一つだ。20年春以降の宅配市場は、「巣ごもり需要」により通販用途が爆発的に増加。ヤマトや佐川などの取扱個数は急増した。翌21年はその反動減もあって伸び率自体は鈍化したが、個数ベースではさらに伸ばした。
ところが22年以降は伸び率がさらに鈍化し、23年に入ると個数は前年割れになるなど足元の実績は低調だ。コロナ禍も丸3年以上が経過し、「特需」は終わってしまったのだろうか? また、物価高への対応や労働環境の改善を理由に、23年4月から佐川は平均約8%、ヤマトは同10%の運賃値上げも断行している。この影響もあるのだろうか?
23年度(23年4月~24年3月)の取扱個数について、ヤマトと佐川は横ばいから微減を見込む。上期はEC需要の低迷が継続し、下期以降は徐々に回復に向かうものの、年度全体では“ゼロ成長”にとどまる見通しだ。
片や、宅配事業を持たない日本通運は、別の理由で足元の実績が低迷している。宅配とはまた異なる特需がピークアウトしたようなのだ。次ページでは、上記の4月度業績だけでは分からない、3社の実績推移をたどりながら詳しく分析していこう。すると、意外な3社の苦境があらわになった。