営業職員(生保レディー)の販売チャネルを抱える老舗の朝日生命保険。同社の高齢生保レディーが、高齢夫妻に対して行った営業活動で、トラブルに発展していることが判明。特集『[激変]生保・損保・代理店 保険大国の限界』(全22回)の#17で、その経緯をつぶさに見ていくと、業界共通の課題も浮かび上がってきた。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)
不祥事頻発の営業職員チャネル
各社の今後の陣容や方針は?
2020年10月、第一生命保険の元営業職員(生保レディー)が、顧客24人から約20年間にわたり、19億円超に及ぶ金銭を詐取していたことを公表。生命保険業界だけでなく、社会に大きな衝撃を与えた。
この事件をきっかけに、生保各社から続々と金銭不祥事が公表された。これまでメットライフ生命保険や明治安田生命保険、ソニー生命保険、大同生命保険、日本生命保険、東京海上日動あんしん生命保険の6社が相次いで公表するに至っている。
生命保険の契約や更新の手続きの際には、多くの顧客にとって聞き慣れない専門用語が頻出する。また、途中でお金を引き出せる仕組みなども存在する。それをいいことに、言葉巧みに顧客をあざむき、金銭を詐取する営業職員を生保各社が野放しにしていた実態は、「顧客本位の業務運営」とは真逆だ。
事態を重く見た金融庁は、営業職員チャネルの管理手法について、業界を挙げて改善に取り組むべきだと指摘。個社の経営問題だとして当初は抵抗していた生保業界だったが、あまりに同様の不祥事が相次いで発覚したことから、金融庁に押し切られる形で生命保険協会が指針作りに着手していた。
23年2月に公表された「営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢の更なる高度化にかかる着眼点」(以下、着眼点)は、そんな金融庁と生保業界との綱引きの結果だ。
着眼点の公表により、生保業界は一定の区切りを付けた形だが、依然として金融庁や社会からは、営業職員チャネルに対して厳しい視線が向けられている。さらに、生保会社に見切りを付け、複数の生保会社の商品を販売できる、乗り合い代理店の保険外務員に転職する流れも生まれている(本特集#7『ソニー、プルデンシャル、日本生命を辞めて代理店に転じた現役営業職員が暴露する「私が古巣を見切った理由」【座談会】』参照))。
そこで、日系大手4社のトップに、今後の営業体制についてどのように考えているかを直撃した。
また老舗生保の朝日生命保険で、ベテランの高齢生保レディーによる高齢顧客への営業活動が、あり得ないトラブルに発展していることも取材で判明。個別ケースではあるものの、その経緯と原因をつぶさに見ていくと、業界共通の課題も浮かび上がってきた。次ページでトラブルとなっているケースを詳報していく。