「国税庁の説明は理解できない」、信託型ストックオプション考案者が反論信託型ストックオプションを考案した松田良成弁護士

スタートアップ企業の育成は、日本経済の喫緊の課題だ。岸田政権が掲げる「新しい資本主義」でも、スタートアップ企業が有能な人材を集める際の切り札となるストックオプションの使い勝手の改善が柱の一つとなった。そうした中、スタートアップ企業など約800社が役員や社員へのインセンティブとして導入している「信託型ストックオプション」の課税をめぐって混乱が広がっている。導入企業は、この仕組みを使って役員や社員が得た利益は、株式売却時における税率20%の譲渡課税だとこれまで認識していたものの、国税庁が、新たに権利行使時において給与課税(最大税率55%)とする考えを示したためだ。信託型ストックオプションを考案した松田良成弁護士が、この仕組みの狙いや国税庁の方針の問題点、導入企業への影響などについて語った。(弁護士 松田良成、聞き手/名古屋外国語大学教授 小野展克)

信託型ストックオプションは
オーナーと会社に貢献した人をつなぐ仕組み

――どのような経緯と狙いで、信託型ストックオプションを考案したでしょうか。

 私がバイオ系ベンチャー企業の役員をしていたときに、創業者のオーナー社長から共に汗をかいた仲間に報いたいという想いから「頑張っている役員や社員に自分の保有株を分けてあげたい。」という相談がありました。ただ、事前に株式を譲渡してしまうと、その後、頑張らなかった人から株を取り上げる基準や仕組みを作るのは難しく、もめ事になります。加えて、株を譲渡すると含み益に課税され、それを社長自身が払う必要があり、税負担が重くなってしまうこともあります。

 そこで、私が考えた仕組みが信託型ストックオプションでした。