際立つ財政運営の緊張感のなさ
米国債務上限問題を批判できず
岸田政権は6月16日、「経済財政運営と改革の基本方針2023」(いわゆる「骨太の方針」)を閣議決定した。
骨太には、首相肝いりの異次元の少子化対策や「新しい資本主義」加速化などの取り組みが盛り込まれたが、少子化対策や防衛費増額といった新たな追加歳出に関する財源をいかに確保するかは、一切言及していない。
財政運営についても、「歳出構造を平時に戻していく」「中長期的な視点を重視した経済財政運営に取り組む」などとうたいつつ、基礎的財政収支(PB)の黒字化達成の目標年度も記載せず、いわば財政再建は“口先だけ”の「骨太の方針」になってしまっている。
対照的なのは、つい先頃まで債務上限引き上げ問題で世界を騒がせていた米国の財政赤字への取り組み姿勢だ。
デフォルト(債務不履行)に陥るデッドラインとされた6月5日が迫るなか、バイデン大統領と下院のマッカーシー議長(共和党)の数度にわたる協議や議会与野党のぎりぎり交渉の末、双方が歳出削減でかなりの譲歩をし決着させた。
米国の債務上限問題はこれまでにも国際金融市場に冷や汗をかかせてきた。今回もまた土壇場での合意だったが、これを「今回もお決まりの“茶番劇”だった」などと揶揄する資格は、少なくとも日本にはない。