「不動産はインフレに強い」という声もあるが、今後5年間のオフィス市況は不透明感が強く、賃料上昇が期待しにくい。とはいえ、各社の中期経営計画には最高益更新やROE(自己資本利益率)向上など強気予想も目立ち、株価が出遅れている企業も多い。厳しい環境でも増益を続ける企業の条件とは何か。特集『日本再浮上&AIで激変! 5年後のシン・業界地図』(全16回)の#1では、不動産・住宅セクターの今後5年間の本命企業や注目テーマの分析に加えて、意外なダークホース企業も紹介する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
「不動産はインフレに強い」は本当?
オフィスビルの賃料は需給で決まる
「逆風の5年間になるかもしれない」――。三井不動産、三菱地所など財閥系不動産が最高益を更新し、ヒューリックやオープンハウスグループなど新興プレーヤーが躍進するなど、アベノミクス以降の金利低下を追い風に業績を伸ばしてきた不動産・住宅セクター。
だが、足元は曲がり角を迎えつつある。日本もついに長期のデフレが終焉しつつあり、金融政策を転換する可能性が高いからだ。
特に今回が過去のケースと異なり厳しいのは、不動産会社の資産の半分以上を占めるオフィス市況に不透明感が強いことだ。
「2006年のインフレと異なり、足元はオフィス需要が弱い。これから低金利時代に決まったプロジェクトなどが供給されることもあり、オフィスの空室率は6~7%水準で高止まりして、賃料も下がると予測している」(SMBC日興証券の田澤淳一シニアアナリスト)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の姉川俊幸シニアアナリストも「オフィスビルや商業不動産の賃料を決める最大の要因は需給。インフレとは連動していない」と指摘する。
不動産企業の収益源はオフィス賃貸以外にも商業、物流などの賃貸運営や、不動産売却などがある。幸いなことに商業やホテルはコロナ禍が落ち着いたことによるリオープニング(経済活動の再開)で収益が回復している。
環境が変われば、主役となるプレーヤーも交代するのが世の常だが、果たして次の5年の主役企業はどこか。
財閥系不動産は上場企業の中でも年収がトップクラスだが、オフィス市況が苦しい中でも強さを発揮するのか。次ページでは不動産セクターに加えて、米国事業や物流事業を伸ばす住宅セクターの注目企業も紹介。強い企業だけでなく、今のままではジリ貧となるかもしれない企業についても解説する。