6月16日の金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の植田和男総裁6月16日の金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の植田和男総裁 Photo:JIJI

物価は「2%」超え、春闘も好調
「多角的レビュー」は何のために

 日本銀行の植田和男総裁が4月の就任後最初の金融政策決定会合で明らかにしたのは、過去25年にわたる金融政策のレビューを行うことだった。

 これは1年から1年半程度をかけて多角的に行うものであり、1カ月半程度で終わった2016年の「総括的な検証」よりもはるかに大がかりなものだ。

 レビューの対象が過去25年なのは、25年前の1998年頃から日本は「デフレ」と呼ばれる状況になり、その状況からの脱却のため日銀はさまざまな非伝統的手段で金融緩和を続けてきたからだ。

 レビューを行う方針が公表された際、市場参加者はやや拍子抜けした。消費者物価の上昇率は2%をはるかに超えている。春闘でも30年ぶりの大幅賃上げが実現した。

 日銀総裁が植田氏に交代したのを機に、早々にも何らかの政策修正があるのではないかとの期待が市場にはあった。

 ところが実際に出てきたのは、「粘り強く金融緩和を続ける」というメッセージとレビューの実施宣言だった。

 なぜ緊急性の乏しいレビューを行うのか、真意を測りかねた市場関係者も少なくなかった。

 だがレビュー結果の活用には3つの可能性がある。