ハウスメーカー、デベロッパー、ゼネコンの三つの顔を持つ大和ハウス工業は、この10年で売上高を2倍以上にも成長させてきた。その成長スピードは、ハウスメーカー大手の積水ハウスはもちろん、デベロッパー大手の三井不動産や三菱地所、ゼネコン大手の鹿島や大林組など、3方面でかち合うライバルをしのぐ。特集『大和ハウス工業 三刀流の異端経営』(全6回)の#4では、大和ハウスの「三刀流経営」の正体を解き明かす。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
鬼籍に入ってから20年でも
創業者の“存在感”は圧倒的
「志在千里」――。大和ハウス工業本社(大阪市北区)と東京本社(東京都千代田区)の1階入り口では、創業者石橋信夫氏が揮毫した書と共に石橋氏の胸像が出迎える。逝去から今年で20年がたつが、創業者の“存在感”は今でも圧倒的だ。
ハウスメーカー、デベロッパー、ゼネコンの三つの顔を持つ大和ハウスが「三刀流経営」で成長を続けてきたのは、「創業100周年で売上高10兆円」という創業者の夢へ突進するためである。
とりわけ、ここ10年の大和ハウスの成長はすさまじい。売上高は2012年度の2兆0079億円から22年度は4兆9081億円と、2倍以上にも拡大させている。
これは、最大のライバルであるハウスメーカーの積水ハウス、デベロッパー大手の三井不動産、三菱地所、ゼネコン大手の鹿島、大林組よりも群を抜いた成長力である。
「大和ハウスなんてしょせん、ライバルでもないし格下だと思っていた。それは今でも変わらないが、会社の規模では全く手が届かないところまで先に行ってしまった」。デベロッパー、ゼネコン大手の関係者は驚くほど口をそろえ、大和ハウスへの“負け惜しみ”を吐露する。
では、大和ハウス「三刀流経営」の神髄、強さとは何か。
次ページからは大和ハウスの「三刀流経営」の全容について解き明かす。その神髄は、ゼネコンやデベロッパーといった旧来のプレーヤーが構築し得ない、異端のビジネスモデルにある。そこには「積極精神」や「先の先を読む」といった創業者の金言に基づく経営判断はもちろん、“野武士軍団”のモーレツ営業という秘訣があった。