政治家まで問題視し始めたことで
終わりの見えないビッグモーター事案
中古車販売店大手のビッグモーターに、私鉄大手の東急グループで発覚したカルテルの他企業への広がり、加えて手数料ポイント制度と、2005年、06年に起こった保険金不払い事件時の混乱をほうふつさせる事案が今、損保業界で巻き起こっている。とりわけ、ビッグモーターについては多くの政治家が問題視する事態となっており、損保会社の監督官庁である金融庁も、行政処分を視野に入れて動かざるを得なくなっている。
それに合わせて、メディアの報道も過熱。時に混乱も起こっている。例えば、7月下旬のテレビ報道では、「ビッグモーターの顧客の保険加入率や事故件数が、損害保険ジャパンの担当者の給料に反映される」「『事故を起こしたときには保険に加入していなくても、契約日をさかのぼって保険契約を締結して保険を使えるようにする』というアドバイスをした」といった内容の報道がなされたが、後に1分30秒にわたって訂正を行っている。
もっとも、前者については、保険代理店1社の保険加入率や事故件数が損保会社社員の給料に直接影響することはないが、他の販売チャネルを合わせた会社全体の業績として給料に反映されるため、広い意味では全くの無関係とは言い切れない。後者については、一般に考えられない事案のため、精緻な調査が必要だっただろう。
また、8月に入り、「損保ジャパンが外部弁護士の厳格な調査は『不要』と、競合の損保各社に働きかけていた」との報道があったが、昨年夏にいったい何が起こっていたのか。
次ページでは、昨年7月に損保3社で行った会合の中身をひも解くとともに、ビッグモーターの事案で損保業界が炎上する中、営業攻勢をかける大手損保のあきれた実態を見ていく。そこには、損保業界に根強い営業最優先の姿勢がある。