プーチンの言い分「穀物は不誠実な欧州人に渡った」の無視できない側面…佐藤優が解説Photo:Yurikr/gettyimages

ロシアは7月18日、ウクライナ産の穀物を黒海経由で輸出する国際協定(黒海穀物イニシアチブ)を延長しないことを通告。これにより食料価格が高騰する恐れがある。どうすればロシアを復帰させることができるのか元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が、プーチンの頭の中を解き明かす。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)

プーチンはなぜ穀物輸出合意を
停止したのか

 ロシアは7月18日、「黒海穀物イニシアチブ」を延長しないと通告しました。「黒海穀物イニシアチブ」とは、ウクライナ産の穀物を黒海経由で輸出する国際協定です。国連とトルコの仲介によって、昨年7月にウクライナとロシアが署名しました。当初は4カ月間限定でしたが、2度の延長を経て現在に至ります。

 日本外務省のホームページ(HP)によれば、〈これまで3200万トンを超える穀物等をいわゆる「グローバル・サウス」と呼ばれる国々を中心とした食料を必要とする国や地域に届け、食料価格の安定や世界の食料安全保障に貢献してきています〉とあります。

 ロシアが延長拒否を表明した翌日、欧州の市場では小麦が前日比8.2%、トウモロコシが5.4%、それぞれ値上がりしました。

 日本や西側諸国は、ロシアが世界の食料危機をあおっていると非難するのみで、延長拒否の意図や主張の中身については報じません。しかし情勢分析を行う際は、まず相手の真意を知ること。是非の判断は、その後です。