58歳で会社を売却、資産30億円の富裕層ファミリーが暗転…相続失敗でまさかの大損写真はイメージです Photo:petesphotography/gettyimages

富裕層といえば、多くの資産を築き、豊かで安定した生活を送っているとイメージする方が多いでしょう。しかし、富裕層の人たちの人生にも予測不可能な展開があり、失敗することもあります。特集『富裕層の「お金の大失敗」』の#5では、ある50代の会社経営者の失敗をご紹介します。(税理士・YouTuber 菅原由一)

58歳で会社を20億円で売却、悠々自適なリタイア生活のはずが…

 会社経営をしていたAさんは妻と子ども1人の3人家族で、世間からは富裕層と呼ばれるほどの幸せな家庭を築きました。しかし、Aさんに突然起こった出来事により今までやってきたことが、逆に家族を苦しめる結果となったのです。

 Aさんはある地方都市に住んでおり、サービス業の会社を経営していました。会社も順調に成長して、自身が55歳を迎えたところで次の後継者を決める準備に入りました。できれば社員から次の社長になってほしいと思っていましたが、なかなか社長を担ってくれる人材が現れません。

 そこで税理士からのアドバイスもあり、無理に社員から後継者を見つけるのではなく、安定した会社に自社を買収してもらうことも、今いる社員の雇用の安定につながると考え、会社の売却を決断しました。運よく買い手が見つかり、Aさんは58歳で会社を20億円で売却することができたのです。

 売却後も2年間は社長を務め、60歳で退任。Aさんは経営者として築き上げてきた個人の金融資産10億円と会社の売却額20億円、合わせて30億円の現金を個人資産として有することになりました。

 Aさんは老後の生活費の確保と相続税対策を考え始め、不動産業を営む知人からこのようなアドバイスを受けたのです。

「現金で資産を持ち続けていたら、相続税がものすごく高額になるぞ。相続税を節税するには現金を不動産に替えた方がいい。不動産に替えるだけで、財産の評価は半分ぐらいになるから相続税もかなり節税できる。さらに不動産投資をして賃貸に出せば毎月安定した賃料が入るので、老後の生活費も安定する」

 このアドバイスは間違っているわけではありません。しかし、Aさん、そしてAさんの妻と子どもたちが大損するきっかけになったのです。