来年1月から始まる非課税投資制度の新NISAが話題になっている。1人当たり(年齢18歳以上)の生涯投資元本が1800万円まで恒久的に運用益(売却益、配当等)が非課税になる。夫婦2人なら合計で3600万円、年齢18歳以上の子供が2人いる4人家族なら全体で投資元本7200万円まで、金融庁が認可した投資信託(成長投資枠では個別株式も対象)が非課税になる。この結果、中間所得層から準富裕層まで、「投資信託の運用は全てNISAで」という時代になるだろう(新NISAの概要については、金融庁の「新NISA」サイトをご参照いただきたい)。
これは金融機関の立場から見ても一大激変だ。第1に、新NISA口座は1人につき1金融機関のみで使えるものであり、複数金融機関にまたいで同時に使用することはできない(金融機関の変更はできる)。従って、新NISA口座を獲得できない金融機関は、個人向け投信販売がほぼ絶望的になるだろう。すでに始まっているようだが、新NISA口座の獲得営業が熾烈になる。
第2に、新NISAの対象運用商品は、低手数料のインデックス投信中心に金融庁が限定した「つみたて投資枠」(現行のつみたてNISA)と、アクティブ投信や上場個別株を含む比較的広範な種類が認められる「成長投資枠」で異なるが、とにかくどちらかの枠の対象として認められない個人向け投資信託は、今後ほぼ立ち枯れになるだろう。
日本の個人向けの公募投資信託は、米国に比べると銘柄数ばかり多く、1銘柄当たりの純運用資産規模は小さい。これは日本の投信業界が、長期保有で個人投資家(家計)の長期資産形成に貢献することよりも、時々の市場の流行を追って、回転売買させることを狙って銘柄を増やしてきた結果だろう。その結果、運用コストが割高となり、日本の運用会社の低収益性の要因になっている。新NISAを機会に銘柄の淘汰が進めば、全体としては望ましい変化になるだろう。
一方で個人投資家(家計)が、新NISAが可能にする長期の効率的な資産形成を十分に実現できるか、不安な要素もある。今回は新NISAで内外の代表的な株価指数連動型の投資信託に積立投資することを前提に、以下3点に分けてそれを語ってみよう。