ここ数年、「企業理念」を新たにつくろうとする動きが強まっています。というのも、単なる利益の最大化だけでなく、「社会的意義がある活動をしているか」という評価基準が、消費者・パートナー企業・投資家・従業員にとって重要になってきているからです。
これからの時代は、事業の社会的価値を示せない会社は存続することが難しく、会社全体で目指す方向性を言語化した「企業理念」を中心に据えた経営が不可避になっていきます。
そこで今回は、企業理念のつくり方・活かし方を網羅的に解き明かし、「新時代の経営本の決定版」「この本はすごすぎる」と称賛されている『理念経営2.0』の著者・佐宗邦威氏にご登壇いただいた、本書刊行記念セミナー(ダイヤモンド社「The Salon」主催)で寄せられた質問への、佐宗氏の回答を公開します。(構成/根本隼)
Q. やる気がある人とない人がいます
読者からの質問 業務委託で、パーパス策定のサポートを2~3年ほど続けていますが、熱心に関わってくれる人と、そうではない人の濃淡を強く実感しています。
パーパスやビジョンといった企業理念の策定を進める上で、あまり積極的でないメンバーへの適切な働きかけがあれば、ぜひアドバイスをお願いします。
佐宗邦威(以下、佐宗) 働いている人全員で「企業理念の策定にコミットしたい」という情熱を共有するのは、現実的には難しいと思います。
というのも、組織には必ず、全体をけん引していく強い意思がある「コアメンバー」と、そうではないメンバーが混在するからです。
なので、まず大事なのは、コアメンバーが誰なのかをきちんと把握すること、そしてその人たちが「企業理念づくりに注力したい」と前向きになれるような働きかけをすることです。
そうすると、求心力のあるメンバーが企業理念の策定や実装のプロジェクトにコミットしていくことで、周りのメンバーもそのプロジェクトへと引き寄せられていきます。
「これから成長していく組織」と「どんどん腐っていく組織」
佐宗 多様な価値観や意見が尊重されるこの時代において、組織に属する全員で同じレベルの熱意や業務への関心を保つのは、非常に困難です。
なので、コアメンバーが深く納得できる理念を策定した上で、それに強い違和感がある人には、自然な新陳代謝として「組織から離れていく」ことを許容するのが得策ではないでしょうか。
そもそも、「どんな理念だとしても関心がない」というスタンスの人が多数を占める会社というのは、あまり健全ではありません。そのような会社は士気が低くなりがちで、イノベーションも生まれにくいので、組織としての質がどんどん下がっていってしまいます。
そういう人たちが別の組織へと移れるような新陳代謝を促して、理念への理解度・共感度をハイレベルに共有できる「濃い集団」を構成することが、成長力のある強い組織をつくるうえでとても効果的だと思います。
(本稿は、ダイヤモンド社「The Salon」主催『理念経営2.0』刊行記念セミナーで寄せられた質問への、著者・佐宗邦威氏の回答です)