事業を通じて経済価値創出と同時に社会課題を解決する、新しいタイプの企業ムーブメントが起きている。発祥はアメリカ。急成長し一人勝ちを狙うスタートアップの“ユニコーン企業”とは対極的に、ステークホルダーが協力して共存共栄を目指す“ゼブラ企業”だ。環境や人権への意識が高いZ世代の支持が高い。日本においてゼブラ企業の認知拡大や育成を図るZebras and Companyが今年7月、入門書を著した。その『ZEBRA CULTURE GUIDEBOOK Vol.01 ゼブラ企業が分かるガイドブック「ゼブラ企業カルチャー入門」』の著者の一人、田淵良敬氏をインタビューした。(聞き手・文/ダイヤモンド社 論説委員 大坪亮、撮影/嶺竜一)

Z世代に支持される「ゼブラ企業」とは何か?

事業を通じて社会に
良いインパクトを与える

――「ゼブラ企業」は、日本ではまだあまり知られていないと思います。どういう企業なのでしょうか。

 ゼブラ企業は、多くの人が話題にするユニコーン企業に対抗する概念として生まれました。ユニコーン企業は一般に、評価額が10億ドル以上の急成長スタートアップで非上場、主にテクノロジー企業とされています。

 対して、ゼブラ企業には明確な定義などはありませんが、一言で表現すれば「事業を通じて、社会に(良い)インパクトを与える企業」となります。また、ゼブラ企業の特徴として、次の4つのマインドセット(考え方や価値観)を大切にしていることが挙げられます。

 一つ目は、「事業成長を通じて、よりよい社会をつくることを目的としていく」。売り上げや利益の最大化自体が目的ではなく、社会課題の解決を目指していきます。

 二つ目は、お金だけではなくて、「時間、クリエイティビティ(創造性)、コミュニティなど、多様な力を組み合わせることに取り組んでいく」。大きな投資をすれば解決できるような課題ではなく、さまざまな要素が複雑に絡み合っている難題に、多様な力を結集して挑戦していきます。

 三つ目は、「長期的で、インクルーシブ(包摂的)な経営姿勢を大切にしていく」。短期で結果を出すことを目指すわけではありません。なおかつ、株主だけでなく従業員や顧客、社会などすべてのステークホルダーを大切にしています。

 四つ目は、これらの3つの「ビジョンが共有され、行動として一貫していく」。この4つのマインドセットを持っている会社がゼブラ企業と考えています。

Z世代に支持される「ゼブラ企業」とは何か?『ZEBRA CULTURE GUIDEBOOK Vol.01 ゼブラ企業が分かるガイドブック「ゼブラ企業カルチャー入門」』
(一般社団法人Tokyo Zebras Unite編集 、株式会社Zebras and Company 編集・発行)

――なぜゼブラ(シマウマ)という名前なのでしょうか。

 ユニコーンは空想の生物で、絵画ではしばしば単独で描かれます。一方、ゼブラは現実に存在する生き物で、群れで生きています。ゼブラの白黒のしま模様は、事業における経済性と社会性の両方を追求するというゼブラ企業の特徴を表しています。

 しま模様のゼブラは、群れで行動することで全体としてカモフラージュされ、外敵が1頭に狙いを定めるのが難しい。仲間との協力によって能力が発揮される動物です。個々の能力を持ち寄り、コミュニティを大切にして活動するゼブラ企業を連想させます。コミュニティで活動し、異なる企業が補完し合うことで利益を得る共生関係も大切にします。これを示す「相利共生」という言葉も、ゼブラ企業の特徴を示します。