トヨタ自動車が、EV(電気自動車)の開発体制を刷新した。EVの競争力の鍵を握るソフトウエアの開発子会社のトップを任せてきた米グーグル出身の技術者を退任させ、後任に、トヨタグループのデンソー幹部を充てたのだ。なぜトヨタは、EVの根幹となるソフトの開発で、デンソーに助けを求めたのか。業界を騒然とさせた人事の裏にある、トヨタの焦燥や、車載OS開発の混乱などを徹底解説する。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
“お雇い外国人”を解任した背景に
EVの鍵握る車載OS開発の混乱
トヨタ自動車が9月7日に発表した衝撃の人事の舞台は、車載OS(基本ソフト)の開発を手掛ける子会社、ウーブン・バイ・トヨタだった。同社のCEO(最高経営責任者)を務めていた米グーグル出身のジェームス・カフナー氏が10月1日に退任し、デンソー出身の隈部肇氏が新たにCEOに就く。わざわざ高額の報酬で招いた“お雇い外国人”を解任し、昔ながらの“身内”に大仕事を委ねるようなものだ。
トヨタは、人事の狙いについて、車載OSの実装をスピーディーに進めるためと説明しているが、実態はそんなにシンプルなものではなさそうだ。
次ページでは、トヨタがソフト開発子会社への介入を強めた理由や、今回発表されたトップ交代の狙い、さらにその裏にある車載OS開発の混乱などを明らかにする。