新型コロナウイルス禍がかなりの落ち着きを見せ、社会は少しずつ元通りになりつつある。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった問題はいまだに解消されていない。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はキーエンス、ファナックなどの「製造用機器・システム」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
キーエンスは増収増益で営業利益率5割
ファナックは営業利益3割減
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の製造用機器・システム業界4社。対象期間は2023年2~6月の四半期としている(4社とも23年4~6月期)。
各社の増収率は、以下の通りだった。
・キーエンス
増収率:15.8%(四半期の売上高2223億円)
・ファナック
増収率:マイナス4.6%(四半期の売上高2018億円)
・SMC
増収率:マイナス5.9%(四半期の売上高1990億円)
・マキタ
増収率:マイナス5.6%(四半期の売上収益1845億円)
製造用機器・システム業界4社は、キーエンスが「独り勝ち」の2桁増収となった一方で、他の3社は減収を喫した。
利益面においてもキーエンスの優位は揺るがず、営業利益・純利益ともに増益で着地した。詳しい数値は後述するが、売上高営業利益率は約50%と驚異的な水準である。
残る3社の利益面は、マキタが為替の影響や「販売費及び一般管理費(販管費)」の減少などによって減収の影響をカバーし、営業利益・純利益ともに増益で着地した。一方、ファナックとSMCはいずれの指標も2桁減益だった。
このうちファナックは、キーエンスと双璧をなすFA(ファクトリーオートメーション)関連機器メーカーとして知られるが、今回分析対象とした四半期の業績はキーエンスと大きな差がつく結果となった。
またファナックは足元の不調を踏まえ、24年3月期の通期業績予想の下方修正を早々に余儀なくされた。
キーエンスとファナックの業績は、なぜ明暗が分かれたのか。次ページでは、各社の増収率の推移を紹介するとともに、この2社の業績について詳しく解説する。