空が青い理由、彩雲と出会う方法、豪雨はなぜ起こるのか、龍の巣の正体、天使の梯子を愛でる、天気予報の裏を読む…。空は美しい。そして、ただ美しいだけではなく、私たちが気象を理解するためのヒントに満ちている。SNSフォロワー数40万人を超える人気雲研究者の荒木健太郎氏(@arakencloud)が「雲愛」に貫かれた視点から、空、雲、天気についてのはなしや、気象学という学問の面白さを紹介する『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』の内容の一部を特別に紹介します。
自然災害と陰謀論
大きな自然災害が起こると、必ずといっていいほど持ち上がるのが「陰謀論」です。何らかの陰謀によって人為的に引き起こされたのではないか、という噂が流れます。
事実とかけ離れた非科学的な論理で不安や対立を煽る人が世の中にはいるのです。
研究によると、SNSでそうした投稿を行っているのはごく一部、全体の一パーセントほどだそうですが、拡散されて一般の人にも広まってしまうことがあるから厄介です。
現在の技術では、日時や場所、大きさを特定できるほど確度の高い「地震予知」は不可能であることがわかっています。
「この日時にこの場所で地震が起こる」とデマを流して人々の不安を煽り、会員制のオンラインサロンなどでビジネスをしている人もいるようですから、注意してください。
天気予報については、気象庁は予測精度の確認のために、「捕捉率」ではなく「適中率」を使っています。
捕捉率では実際に雨が降った場合だけを取り出して、雨予報が当たった割合としています。すると、雨が降ろうが晴れようが毎日雨予報を出していれば、捕捉率は一〇〇パーセントという、見かけ上だけ大きな数字になるのです。
適中率は雨が降るといって降ったときと、降らないといって降らなかった場合の両方を扱っているので、当たったか外れたかが明確になります。そのため、適中率のほうが天気予報などの評価方法として適切なのです。
適中率と捕捉率
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陰謀論を見分ける2つのポイント
気象庁における緊急地震速報の適中率は、二〇一九年度には九割を超えています。一方で日本では、マグニチュード4以下の地震は毎日のように起きていますから、「明日地震が起こる」といえばほぼ必ず当たります。
インターネット上の地震予知は全てデマなので、真に受けず、日頃から地震への備えをするようにしましょう。
疑似科学や陰謀論を見分けるポイントは二つあります。
まずは、「公的機関から出ている情報であるかどうか」です。そして、「根拠となる科学データがあるかどうか」です。
特定の単語のみで検索すると、間違った論説を肯定的に書いた記事が数多く表示されるため、怪しいと思った場合は、「疑似科学」「陰謀論」という言葉も一緒に検索してください。
そうした手続きを積み重ねながら、科学的に正しい情報を探せるようになることが大切です。
(本原稿は、荒木健太郎著『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』から抜粋・編集したものです)
雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・博士(学術)。
1984年生まれ、茨城県出身。慶應義塾大学経済学部を経て気象庁気象大学校卒業。地方気象台で予報・観測業務に従事したあと、現職に至る。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、気象災害をもたらす雲の仕組みの研究に取組んでいる。映画『天気の子』(新海誠監督)気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』『もっとすごすぎる天気の図鑑』『雲の超図鑑』(以上、KADOKAWA)、『世界でいちばん素敵な雲の教室』(三才ブックス)、『雲を愛する技術』(光文社新書)、『雲の中では何が起こっているのか』(ベレ出版)、新刊に『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』(ダイヤモンド社)などがある。
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