上場企業でスキルマトリックスの開示が進んでいる。取締役の保有スキルや期待スキルを表す資料だが、その運用実態は各社でばらつきがあり、実効性には疑問符も付く。時価総額上位50社のうち開示のあった46社について徹底分析した結果、スキルの開示姿勢に課題が見えてきた。特集『出世・給与・人事の新ルール』(全10回)の#4では、46社の全役員のスキルマトリックスを完全公開する。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
上場644社中92%が開示
「スキルマトリックス」は言ったもん勝ち?
取締役の知識や経験を一覧に表した「スキルマトリックス」を開示する企業が急増している。
三井住友信託銀行によると、5月末までに株主招集通知を公表したプライム市場上場企業644社のうち、開示した企業は92%に上った。昨年の開示企業は30%にとどまり、わずか1年で約3倍に増えた格好だ。
開示企業急増の背景には、2021年のコーポレートガバナンス・コードの改訂がある。上場企業はスキルマトリックスの開示が原則求められることになったのだ。
だがスキルの開示姿勢については企業によって格差があり、いいかげんな企業が多いのも事実である。何しろ、掲げられている「スキル名」が示す能力の内容の具体的な説明だけでなく、その取締役の「スキルの有無」を客観的に判断する根拠にまで触れている企業は、極端に少ないからだ。
次ページでは、時価総額上位50社のうち開示のあった46社について、スキルマトリックスの項目と全役員の該当状況を完全網羅したリストを公開する。さらに、その分析で浮上した、スキル項目をすべて満たす「パーフェクト経営者」14人を公開する。
それを見れば、スキルマトリックスの運用の「不可解さ」が一目瞭然になるだろう。