北朝鮮の金正恩総書記がロシアを訪れ、4年5カ月ぶりにプーチン大統領との首脳会談が開かれた。4時間を超えた会談の具体的内容はほとんど公開されていないが、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏は「ウクライナ戦争で苦戦するロシアへ北朝鮮が弾薬を送る約束をしたのではないかという臆測が報道されているが、その可能性は低い」という。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)
「金正恩が苦境のプーチンに
弾薬を送る約束をした」可能性は低い
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が、1週間かけてロシアの極東地方を訪れました。ただしこの訪問では、「朝鮮民主主義人民共和国国務委員長」の肩書を使っています。党の代表ではなく、国家の指導者としての訪露であることを強調するためです。
日本や欧米のメディアでは、ウクライナ戦争で苦戦するロシアへ北朝鮮が弾薬を送る約束をしたのではないかという臆測が報道されています。しかし、私はその可能性は低いとみています。
理由は二つあります。第一にロシアの武器と弾薬の生産体制は国有化されており、生産能力も十分あるため、「弾切れ」状態に陥っていないと考えられるためです。第二にロシアが北朝鮮製の武器や弾薬を入手するなら、東南アジアの武器市場において民間軍事会社経由で容易に入手できるからです。容易に入手できる弾薬について、朝ロ首脳会談という目立つ場で合意して、国際的批判を浴びる状況をつくるほど、プーチン大統領も金総書記も間抜けではないでしょう。
では会談の目的は何だったのか。4時間を超えた首脳会談の具体的内容はほとんど公開されていませんが、公開情報から多くのことが考察できます。
9月13日には、アムール州のボストーチヌイ宇宙基地でプーチン大統領と面会しました。ロシア「イズベスチヤ」紙はこの日、〈「ボストーチヌイ宇宙基地」の予測:ウラジーミル・プーチン氏と金正恩氏は宇宙基地で何を合意したのか?そしてなぜ西側諸国はモスクワと平壌の和解を恐れるのか?〉と題して、こう報じています(ロシア語から筆者が翻訳)。